筑波大学循環器内科の下條信威氏

 エンドセリン-1誘発性の心筋細胞肥大エイコサペンタエン酸EPA)が抑制することが明らかにされた。ラット心筋細胞の初代培養を用いた実験による研究成果で、これらの結果はEPAの臨床的心保護作用のひとつとして説明された。第72回日本循環器学会総会・学術集会のポスターセッションで、筑波大学循環器内科の下條信威氏が3月30日に報告したもの。

 エンドセリン-1は強力な血管収縮作用を有する神経液性因子であり、心筋肥大や心筋リモデリングの促進物質でもあることが知られている。

 一方、EPAは諸家の研究で心保護作用が認められ、大規模介入試験JELISからは、冠動脈疾患の予防効果も報告されている。

 そこで下條氏らは、「エンドセリン-1誘発の心筋細胞肥大を、EPAが抑制するか否か」、「抑制するならば、いかなる分子メカニズムによるものか」を培養細胞で検討した。

 実験には、生後2日のSDラットから採取した心室心筋細胞を用い、初代培養下でエンドセリン-1(0.1nM)を添加するET群と、EPA(10μM)の24時間先行添加後にエンドセリン-1を加えるET+EPA群などを設けて比較検討を行った。

 結果としてET群では、(1)細胞表面積が約2倍に増加、(2)総たんぱく合成能の指標であるLeucineの細胞内取り込み増加、(3)心筋細胞骨格α-actininの発現亢進、(4)心肥大マーカーであるANPmRNAの発現亢進を認めたが、これらはすべてET+EPA群にて抑制されていた。

 これらの結果から、エンドセリン-1誘発性心筋細胞肥大は、EPAによって明確に抑制されるものと考えられた。

 次に、分子メカニズムの検討だが、ET群ではJNK(c-Jun Nterminal kinase)やc-junなどの発現亢進を認め、これらが心肥大を促すものと考えられるが、ET+EPA群ではそれらがほぼ正常化していた。また、ET群ではPPAR-αの発現と転写活性に低下を認めたが、ET+EPA群では著明に改善していた。

 以上から、EPAによる心肥大抑制作用メカニズムはJNKやc-junの発現亢進を抑制し、PPAR-αの発現を促進することによるものと考えられた。