久留米大学内科心臓・血管内科の水田吉彦氏

 拡張機能障害がある高血圧症例に対して、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)のバルサルタンを1年間投与したところ、心筋線維化が高度な群では心筋線維化が軽減し、拡張能も改善することが分かった。久留米大学内科心臓・血管内科の水田吉彦氏らの研究成果で、第72回日本循環器学会総会・学術集会で報告された。

 心不全の約30〜50%は左室拡張機能障害が原因と言われているが、拡張障害に対する特異的な治療法はいまだ確立されていない。拡張障害の機序としては高血圧性心臓病による心筋線維化が注目されている。

 水田氏らは、ラット高血圧肥大心において、局所アンジオテンシン系活性化が心筋線維化に関与しており、非降圧量のARBが心筋線維化を特異的に抑制し、拡張機能障害を改善することを以前に報告している。また、臨床的にもARBが高血圧心の線維化を軽減し、拡張能を改善するとの海外の報告もある。

 しかし、ARBの効果がどのような高血圧症例において、より有用であるかは明らかでない。そこで水田氏らは、左室収縮能が正常で拡張機能障害を呈する高血圧症例について、心筋線維化が高度な群と軽度な群に2分して、ARBのバルサルタンを1年間投与し、心エコーによって非侵襲的に両群の心筋線維化と拡張能障害の変化を比較検討した。

 対象は、久留米大学病院と関連4施設に外来通院または入院中の高血圧症例(>140/90mmHg)のうち、正常洞調律で左室収縮能は保たれているが(駆出率≧50%)、拡張能障害(早期波最大流速/心房収縮期波最大流速[E/A]比<1)を呈する例。心不全既往例については症状消失後1カ月以上安定状態にある者とし、他のARBとアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬服薬中の症例は除外した。
 
 バルサルタンは40〜80mg/日から開始し、140/90mmHg以下を目標に最大160mg/日まで増量し、1年間投与した。バルサルタン投与前と1年後に心エコーを実施し、心筋線維化指標のintegrated backscatter(IBS)-cyclic variation(CV)、および拡張能指標のE/A比を測定した。

 1年間のフォローが可能であったのは43例(平均年齢63歳)で、治療前の心筋線維化程度により、高線維化群(低IBS-CV:23例)、低線維化群(高IBS-CV:20例)の2群に分けた。

 1年後の血圧平均値は両群共に有意(p<0.01)かつ同等に低下した。左室心筋重量係数も両群共に有意(p<0.01)に低下し、左室肥大の退縮を認めた。一方、IBS-CVとE/A比については、高線維化群のみで有意な改善が認められた(p<0.01、p<0.05)。

 以上の結果から水田氏は、「バルサルタンは高線維化群、低線維化群で同等に降圧し、左室肥大を軽減した。また今回、高線維化群で有意に線維化が軽減され、拡張能が改善したことから、高血圧患者の心筋線維化を軽減し、拡張不全を予防するため、ARBを積極的に投与することの有用性が示唆された」と語った。