京都大学大学院内科学准教授の木村剛氏

 薬剤溶出ステントDES)の留置例において、遅発性ステント血栓症の予防のためにいつまで抗血小板療法アスピリンチエノピリジン系薬を併用)を続けなければならないかが議論になっている。今回、チエノピリジン系薬を6カ月を超えて継続することは、必ずしも有用ではないとする結果が、日本で行われているDESのレジストリー研究「j-Cypher」の中間解析で示された。京都大学大学院内科学准教授の木村剛氏が、第72回日本循環器学会総会・学術集会のLate Breaking Clinical Trialsセッションで3月29日に発表した。

 j-Cypherレジストリーは、日本の実臨床におけるシロリムス溶出性ステントSES)の安全性と有効性を評価する多施設共同による前向き観察研究で、1万5000例程度の連続症例でデータベースを構築し、SESの有効性や安全性を検討するもの。既に1万5155症例が集まり、2回目、3回目のSES留置を受けた重複例を除く1万2824例について、現在追跡調査を進めている。1年後の追跡が完了したのは全体の96%。

 木村氏らの研究グループは、チエノピリジン系薬をSES留置後6カ月目以降も継続することについての有用性を調べるため、SES留置後の遅発性ステント血栓症の発症頻度について、チエノピリジン系薬を中止した群と中止しなかった群を比較した。

 その結果、留置後6〜12カ月に中止した群、12〜18カ月に中止した群、18〜24カ月に中止した群のいずれについても、継続群に対する有意差は現れなかった。なお、イベントの頻度は、留置後6〜12カ月の継続群では0.08%(7112例中6例)、中止群で0.07%(4353例中3例)(p=0.77)、12〜18カ月の継続群で0.13%(3033例中4例)、中止群で0.28%(2458例中7例)(p=0.21)、18〜24カ月の継続群で0.05%(2044例中1例)、中止群で 0.09%(2162例中2例)(p=0.59)だった。

 一方で、1カ月後から6カ月後の間に中止した群の発症頻度は0.32%、継続例は0.11%となり、有意差があった(p=0.02)。また、1カ月以内に中止した群の発症頻度は0.58%で、継続群0.22%に比べて高かったが、有意差はなかった(p=0.25)。

 一部の施設では、チエノピリジン系薬の投与を留置後3カ月以内としているため、留置後3カ月目に中止例が急増したが、ステント血栓症がそれに伴って増加するという現象は認められなかった。

 さらに、6カ月目にチエノピリジン系薬を継続していた群と中止した群について、その2年後(留置2年6カ月後)のイベント発生率(死亡+心筋梗塞発症)を比較(ランドマーク解析)したところ、継続例で5.8%、中止例で5.5%と有意差はなく(p=0.72)、12カ月目に継続していた群と中止した群についても、その2年後のイベント発生率は4.3%と3.7%で有意差はなかった(p=0.55)

 以上のことから木村氏は、「アスピリンとチエノピリジン系薬を併用する抗血小板療法は、6カ月を超えた場合の長期の有効性については必ずしも支持されるものではなかった」と結論付けた。

 木村氏はほかに、留置1年後のステント血栓症の発生率は0.6%と非常に低かったことや、留置後1年以降に発症する超遅発性ステント血栓症は海外と同様に3年後も依然として認められたが、その率は年率0.3%と低値にとどまっていたこと、DESの再狭窄に伴う再開通術(TLR)の実施率は1年で6.9%と非常に低く、再狭窄抑制という有効性については確立された一方で、TLR後の再狭窄発生率は26.5%とかなり高かったことなども報告した。


【訂正】
 本文第4段落で、薬剤継続群と中止群について、遅発性ステント血栓症の発症頻度を示していますが、各期間の継続群と中止群の数字がいずれも入れ替わっていましたので、上記のように訂正します。