札幌医科大学公衆衛生学講座講師兼内科学第二講座講師の大西浩文氏

 心血管系イベントの強いリスク因子となる慢性腎臓病CKD)の診断基準のひとつに糸球体濾過量(GFR)がある。このGFRのカットオフ値は60mL/min/1.73m2だが、65歳以上の高齢者でのGFRのカットオフ値については50mL/min/1.73m2未満としてもよい可能性が疫学研究から示された。札幌医科大学公衆衛生学講座講師兼内科学第二講座講師の大西浩文氏が、第72回日本循環器学会総会・学術集会のFeatured Research Sessionで3月30日に発表した。

 日本腎臓学会が定めたCKDの診療ガイドラインでは、CKDを、腎臓の障害(蛋白尿など)、もしくはGFRが60mL/min/1.73m2未満の腎機能低下が3カ月以上持続する状態としている。

 大西氏らは、このカットオフ値が心血管系イベントのリスク因子として妥当かどうかを年齢群別に検証するため、端野・壮瞥町研究に登録された762人の男性、1014人の女性を対象としたコホート研究を実施した。2型糖尿病患者は除外した。

 対象者を65歳以上(高齢者群)と65歳未満(非高齢者群)に分け、1991年と92年の登録から最大8年間観察した。eGFR値は、酵素法によって測定したクレアチニン値からMDRD式を用いて算出した。評価項目は、脳血管疾患、虚血性心疾患、心不全などの心血管系イベントと心血管死とした。

 登録時のeGFR値の分布をみると、非高齢者群(1177例)では、70以上は25.7%、60以上70未満が40.7%、50以上60未満が28.1%、50未満が5.4%だった。高齢者群(599例)では、70以上が6.2%、60以上70未満が30.6%、50以上60未満が48.6%、50未満が14.7%だった。

 非高齢者群では、eGFRが60未満の場合、60以上の登録者に比べて年齢、BMI、総コレステロール値、中性脂質が有意に高く、男性比率、HDL-C値、喫煙率が有意に低かった。高齢者群では、同様に60未満の登録者では年齢、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、総コレステロール値、中性脂質が有意に高く、HDL-C値、喫煙率が有意に低かった。