千葉大学大学院医学研究院細胞治療学教授の齋藤康氏

 第72回日本循環器学会総会・学術集会初日のLate Breaking Clinical Trials Session 1で、JELIS試験におけるエイコサペンタエン酸EPA)の冠動脈イベント抑制1次予防と2次予防についてのサブ解析結果が報告された。このうち1次予防の解析結果は、「高TG・低HDL-Cを呈するハイリスク例では、EPAによって特に強力な有効性が認められ、主要冠動脈イベント(MCE*)の発症リスクが53%減少した」という、非常に興味深い内容である。JELIS Investigatorsを代表して、千葉大学大学院医学研究院細胞治療学教授の齋藤康氏が発表した。
 
 JELIS試験は、脂質異常症患者を対象に、EPAの冠動脈疾患予防効果を検討した国内初で最大級の大規臨床介入試験である。

 対象は血清総コレステロール値が250mg/dL以上の脂質異常症患者1万8645例(うち、冠動脈疾患の既往あり1万4981例、既往なし3664例)であり、全例にスタチンを投与したうえで、高純度EPA製剤1800mg/日を投与するEPA群と、非投与の対照群に無作為で割り付けし、最長5年(平均4.6年)の追跡が行われた。

 サブ解析では、コレステロール低下に依存しないEPAの効果を明らかにするためにマルチプルリスクファクターに着目し、EPAによるMCEの予防効果を調べた。

 まず、EPAのTG低下作用に着目し、TGに関連するファクターを検討したところ、TGおよびHDL-Cに異常のない集団と比較して、「TG≧150mg/dLかつHDL-C<40mg/dL」のグループでは、MCE発症リスクが1.71倍と有意に増加しており(p=0.014)、高TG・低HDL-Cを呈する例は確かにハイリスクであることが確認された。

 次に、本サブ解析の主題だが、EPAの投与により、上記のハイリスク例(n=957)におけるMCE発生リスクは、対照群に比べて有意に53%減少していた(ハザード比0.47、95%信頼区間0.23-0.98、p=0.043、 NNT=48)。

 ちなみに、全例対象のJELIS試験メイン解析(n=18645)では、EPA投与によってMCE発症リスクが有意に19%減少していた。したがって、高TG・低HDL-C例では、EPAの有効性がより高いことが示唆された。

 なお、JELIS試験の既報告によれば、(1)EPAによるMCE予防効果は、血清LDLコレステロール改善から独立しており、(2)同効果は、治療期間中の血中EPA濃度(EPA/アラキドン酸比)の上昇に依存することなどが明らかにされていた。

 この知見は今回のサブ解析にも当てはまり、試験期間中の血中EPA濃度が高い例ほど、MCEの予防効果が良好に得られていた。

なお、コメントスピーカーとして発言した熊本大学臨床系循環器病態学教授の小川久雄氏は、このようなEPAが著効する患者群についてメタボリックシンドロームである可能性を指摘した上で、その作用機序として、(1)アディポネクチン上昇作用、(2)マクロファージ抑制によるプラーク安定化作用、(3)抗炎症作用、(4)凝固線溶系の改善作用、の可能性を指摘した。


*) 主要冠動脈イベント(MCE:Major Coronary Event):心臓突然死、致死性および非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、インターベンション(心血管再建術、ステント留置術、冠動脈バイパス術)を含む。