神戸大学・保健学科の石川雄一氏

 第72回日本循環器学会総会・学術集会3月28日のLate Breaking Clinical Trial Session 気如JELIS試験のサブ解析結果が報告された。「心筋梗塞インターベンション既往例では、EPAにより主要冠動脈イベントMCE*)の再発リスクが41%減少した」という、驚くべき内容である。JELIS Investigatorsを代表して、神戸大学・保健学科の石川雄一氏が発表した。
 
 JELIS試験は、脂質異常症患者を対象にエイコサペンタエン酸(EPA)の冠動脈疾患予防効果を検討した国内最大級の大規模介入試験である。

 対象は血清総コレステロール値が250mg/dL以上の脂質異常症患者1万8645例で、そのうち3664例が冠動脈疾患の既往を有しており、今回のサブ解析に供された。
 対象には全例にスタチンを投与した上で、高純度EPA製剤1800mg/日を投与するEPA群と、非投与の対照群に無作為で割り付けし、最長5年(平均4.6年)追跡した。

 今回のサブ解析では、EPAによるMCEの2次予防効果を知る目的で、患者背景ごとに層別解析が行われた。結果は以下の通りである。

 全冠動脈疾患既往例(n=3664)におけるMCE発生率は、対照群で10.7%、EPA群では8.7%だった。MCEの再発リスクはEPAによって有意に23%減少した(ハザード比0.77、95%信頼区間0.63-0.96、p=0.017、NNT=49)。

 心筋梗塞+インターベンション既往例(n=537)におけるMCE発生率は、対照群で24.7%、EPA群では15.2%。MCEの再発リスクは、EPAで有意に41%減少した(ハザード比0.59、95%信頼区間0.40-0.87、p=0.008、NNT=10)。

 インターベンションの有無を問わず、心筋梗塞の既往だけで対象を層別化した場合(n=1050)、MCE再発リスクはEPA群で有意に27%減少していた(ハザード比0.73、95%信頼区間0.54-0.98、p=0.033、NNT=19)。

 同様に、心筋梗塞の有無を問わず、インターベンションの既往だけで対象を層別化した場合(n=895)、MCE再発リスクはEPA群で有意に35%少なかった(ハザード比0.65、95%信頼区間0.48-0.89、p=0.007、NNT=13)。

 心筋梗塞+インターベンションの既往があるのに、抗血小板療法を並行して行わなかった例(n=106)では、対照群のMCE発生率は23.4%、EPA群では10.2%で、MCE再発リスクはEPA投与で62%の減少傾向を認めた(ハザード比0.38、95%信頼区間0.14-1.06、p=0.064)。

 なお、試験期間中における血清コレステロール(TC、LDL-C、HDL-C)値の変化は両群で等しく、EPAのMCE再発予防効果には、コレステロール以外の因子が関与することが示唆された。

 コメントスピーカーとして発言した大阪大学循環器内科学准教授の山下静也氏は本試験の意義として、両群にスタチン製剤がベースとして投与されている“リアルワールド”の試験デザインであることや、LDLコレステロールに依存しないEPAの独自作用が臨床で証明されたこと、欧米と比較して魚食の比率が高く、冠動脈イベントの少ない日本人でも、EPA投与によって冠動脈イベントの発症リスク低下が認められたことなどを挙げていた。


*) 主要冠動脈イベント(Major Coronary Event):心臓突然死、致死性および非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、インターベンション(心血管再建術、ステント留置術、冠動脈バイパス術)を含む。