東北大学大学院・循環器病態学分野の圓谷隆治氏

 エイコサペンタエン酸(EPA)投与が心臓突然死を抑制する機序として、心筋虚血における電気生理的な保護作用が関与している可能性が示唆された。動物実験に基づく成果で、東北大学大学院・循環器病態学分野の圓谷隆治氏が、第72回日本循環器学会総会・学術集会のポスターセッションで報告した。

 かつてイタリアで、1万例以上を対象にした大規模臨床介入試験「GISSI-Prevention Trial」が実施され、n-3系多価不飽和脂肪酸の長期投与による心臓突然死の有意な抑制効果が報告された。しかし、この臨床試験では抑制の機序が明らかにされていない。そこで圓谷氏らは、n-3系多価不飽和脂肪酸による抗不整脈効果が機序のひとつではないかと仮定して、その実験的証明を試みた。

 実験は3〜4月齢の雄性家畜ブタを用いて行った。あらかじめEPA600mg/kg/日を添加した食餌で20日間の飼育を行い、第21日にバルーンカテーテルを使用して、左回旋枝領域に虚血(90分)/再潅流を施行した。

 その結果、EPA無添加の通常食餌にて事前飼育を行った対照群(n=8)では、心筋虚血下に心室細動を頻発し、電気的除細動を加えても半数が死亡した。一方、EPA群(n=8)では心筋虚血下での心室細動が有意に抑制され(p<0.05)、死亡に至った個体は皆無だった。

 この実験系において、虚血/再潅流後の単相活動電位*)を虚血領域の心内膜下で測定したところ、対照群では著明な短縮が認められたのに対し、EPA群では短縮の抑制作用が示された(p<0.05)。

 これらの結果から圓谷氏らは、「心筋虚血におけるEPAの電気生理学的保護作用が、心臓突然死の抑制機序として働いた可能性が示唆される」と考察していた。


*) 単相活動電位(MAP:Monophasic Action Potential):生体内心筋の傷害電位を持続的に計測する方法として考案され、最近では臨床電気生理学にも応用されている。傷害部位と隣接する健常活動部位との間を流れる電流によるものと考えられ、不整脈との関連が諸家より報告されている。