京都府立医科大学循環器内科の的場聖明氏

 重症の末梢動脈疾患PAD)に対して行われる自家骨髄単核球細胞移植による血管新生療法の3年間の予後は、従来行われているバイパス術などと同等、あるいはそれ以上の効果を発揮することが示された。京都府立医科大学循環器内科の的場聖明氏が、第72回日本循環器学会総会・学術集会で3月28日に開催されたLate Breaking Clinical Trialsセッションで発表した。

 下肢の慢性動脈閉塞症(ASO)閉塞性血栓血管炎バージャー病TAO)などの末梢動脈疾患(PAD)は、重症化すると下肢切断を迫られる。このような患者に対し、同科教授の松原弘明氏は、骨髄の単核球を下肢の筋肉に直接注入することで、数週間後には血管新生が起こることを見出した。今回発表されたのは、その効果を11施設による多施設共同研究によって調べた「TACT試験」のフォローアップ結果。エンドポイントは、死亡率と下肢切断回避率とした。

 対象は115人で、内訳はASOが74人、TAOが41人。患者背景は、ASOの平均年齢が67歳、TAOが49歳。ASO患者は基礎疾患をより多く有していた(高血圧はASOが78%、TAOは20% 糖尿病は同65%、17% 虚血性心疾患は43%、12%)。

 本法実施後のASOの死亡率は、1年後で7%、2年後20%、3年後20%。TAOは3年後でも0%だった。なお、日本血管外科学会がこれらの疾患について1992年に実施したアンケート調査(ASO770人、TAO247人)によると、1年後の死亡率はASOが18.5%、TAOも15.0%となっており、本法が比較的良好な結果を示していることが示唆された。

 また、下肢切断回避率については、ASOが1年後で69%、3年後で60%。TAOは1年後で95%、3年後で91%だった。上記アンケート調査によると、バイパス術を行った患者では1年後で68%となっており、本法と同等だった。

 有害事象については、ASOで74人中15人に発生(20.2%)し、虚血性心疾患、脳血管疾患、感染症などがあった。TAOは1人では、下肢動脈における血栓性閉塞が認められるのみだった。

 これらの結果から的場氏は、「骨髄単核球細胞移植によるPADの治療は、安全性や死亡率の点で、従来の再開通のための治療法と比較して優れていると考えられる。特にTAOについては非常に良好な効果が得られる」と述べた。

 会場からのコメントでは、「これまでの自験例を見ると、自覚症状が良くなっているにもかかわらず、他覚的所見の改善があまり見られないという特徴がある。今後は、何らかの治療法の改善と、どのような患者に実施していくかという点を検討していく必要がありそうだ」という声が挙がっていた。


【訂正】
 本文第5段落で、「ASOが1年後で31%、3年後で40%。TAOは1年後で5%、3年後で9%だった」「バイパス術を行った患者では1年後で32%となっており」とありましたが、正しくは、「ASOが1年後で69%、3年後で60%。TAOは1年後で95%、3年後で91%だった」「バイパス術を行った患者では1年後で68%となっており」でした。訂正します。