神戸市立中央市民病院循環器内科の江原夏彦氏

 インスリン抵抗性によって生じる高インスリン血症心血管系イベントにつながるリスク要因とされているが、糖尿病治療で投与するインスリンも同様に心血管系イベントにつながる可能性が指摘された。第72回日本循環器学会総会・学術集会のFeatured Research Sessionで、神戸市立中央市民病院循環器内科の江原夏彦氏が発表したもの。

 江原氏は、冠動脈再灌流治療を行った糖尿病患者の予後にインスリンがどう影響するかを明らかにするためのCREDO-Kyoto研究に参加しており、この研究の登録患者を対象にサブ解析を行った。

 CREDO-Kyoto研究は、2000年から2002年の間に、初回PCIまたはCABG施行例を登録、各治療法選択の現状と5年後までの長期成績・予後を調査するもの。1週間以内に急性心筋梗塞を発症した患者を除き、30施設から計9877例が登録された。

 今回、この9877例のうち糖尿病患者でない6115例を除外し、糖尿病治療の状態が分からなかった75例を除いた3762例を対象とした。このうち、インスリン治療を行っていた群(IG群)が820例(21.8%)、インスリン治療を行っていない(食事療法経口血糖降下薬のみ)群(NIG群)が2942例(78.2%)だった。フォローアップ期間は1250±517日だ。

 患者背景についてみると、年齢はIG群67歳、NIG群67歳と有意差はなかったが、75歳以上に限定するとIG群は18.1%、NIG群は22.2%(p=0.01)と有意差があった。HbA1cはIG群が7.7%、NIG群が7.1(p<0.0001)、男性の割合がIG群57.8%、NIG群が70.9%(p<0.0001)、高血圧がIG群67.7%、NIG群が71.3%(p<0.0001)、喫煙の継続でIG群20.9%、NIG群が28.7%(p<0.0001)、BMIが25以上の肥満者がIG群24.9%、NIG群が33.5%(p<0.0001)などについても有意差がみられた。

 IG群は、過去の心筋梗塞有病率、脳血管障害の既往歴、貧血、慢性腎疾患左室機能低下の各項目に該当する例がNIG群よりも多かった。

 生存曲線を解析した結果、全死亡はIG群で高く、3年生存率はIG群が84.8%で、NIG群90.6%に対して低かった(p<0.0001)。心血管死も3年生存率はIG群が89.3%で、NIG群の93.6%に対して低かった(p<0.0001)。しかし、脳血管系イベント、心筋梗塞については有意差はなかった。

 多変量解析を行った結果、全死亡に有意に関係したのは、インスリン治療、年齢75歳以上、慢性心不全既往、末梢・大動脈瘤、心房細動、悪性腫瘍、慢性腎疾患、貧血、多枝病変が予後因子だった。

 これらの結果から江原氏は、サンプルサイズが十分でないとしつつも、初回冠動脈血行再建術を受けた患者が糖尿病でインスリン治療を受けることは、インスリン治療を受けていない糖尿病患者と比べて予後が悪い可能性があり、それはインスリン投与自体が心血管系リスクとなるからだとした。そのため、江原氏は、糖尿病治療は迅速に治療を開始し、インスリン導入まで進行してしまうのを避けるべきだと指摘した。