日本循環器学会が策定を進めている心疾患関連ガイドラインの概要が明らかになった。福岡で開催中の第72回日本循環器学会総会・学術集会の「ガイドライン解説」セッションで発表されたもので、今後、外部評価委員会による評価を受けた後、今年11月には公開される予定だ。

 3月28日のセッション「ガイドライン解説1」で報告された新ガイドラインは、(1)急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療ガイドライン(班長:日本医科大学の高野照夫氏)、(2)ペースメーカー、ICD、CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(弘前大学の奥村謙氏)、(3)冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(熊本大学の小川久雄氏)、(4)脳血管障害、腎機能障害、末梢血管障害を合併した心疾患の管理に関するガイドライン(大阪大学の堀正二氏)、(5)血管炎症候群の診療ガイドライン(聖マリアンナ医科大学の尾崎承一氏)、の5つ。今後、公開までの間、評価によっては内容の一部変更があり得るという。本セッションでは、それぞれのガイドラインの各班長が各ガイドラインの概要を発表した。

急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療ガイドライン
 以前から「急性心筋梗塞の診療エビデンス集」として治療指針はあった。昨年、「急性冠症候群の診療に関するガイドライン」が発表されたが、不安定狭心症と持続性ST上昇を伴わない急性心筋梗塞(非ST上昇型)のみを扱っていた。新ガイドラインは、ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関してまとめた初のものとなる。

 このガイドラインは、発症から入院まで、救急外来またはCCUでの初期治療、入院回復期あるいは退院後の患者管理、など時間軸に沿って構成されている。診断アルゴリズムとして、問診や身体所見から12誘導心電図や採血を実施するまでを10分間以内、冠動脈造影検査のための動脈穿刺までの“Door to needle time”を30分間以内、バルーンによる再灌流までの“Door to balloon time”を90分間以内とすることを推奨している。

 新たな診断基準として「トロポニン陽性」を採用した。心臓外科体制が整っていないだけでなく、近隣病院の外科手術室に転送できない施設におけるprimary PCIについて、クラスIII、レベルCとしたが、会場からは、地方では必ずしも都市部と同じような体制が整わないとする指摘があった。

ペースメーカー、ICD、CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン
 ペースメーカーやICD、CRT、CRT-Dなどのデバイス治療に関しては、「不整脈の非薬物治療ガイドライン」が出され、治療の効果や適応などが示されてきたが、治療後の社会復帰の問題点、日常生活で注意すべき点、就労や就学で配慮すべき点などが系統立って示されることがなかった。そのため、新たに本ガイドラインがまとめられた。

 推奨される診断法、治療法と、避けるべき治療などを明確にするためのクラス分類が用いられている。社会復帰・就学・就労などについてはクラス分類ができないので、デバイスの機能や構造に応じた管理・指導法、日常生活や自動車の運転などの制約と対処法、就学・就労上の問題点、対処法などをステートメントの形で記載している。