熊本大学循環器病態学助手の小島淳氏

 糖尿病を併発する急性心筋梗塞患者の冠動脈インターベンションPCI)施行後96時間以内にスタチン投与を開始した場合、重篤な心血管系イベントリスクを67%下げることが明らかになった。特に、不安定狭心症の発症リスクを下げるという。第72回日本循環器学会総会・学術集会のLate Breaking Clinical Trialセッションで3月28日、熊本大学循環器病態学助手の小島淳氏が発表した。

 これは、同グループなどが実施したMUSASHI試験のサブ解析の結果だ。MUSASHIは、心筋梗塞患者を対象にスタチン投与による主要心血管系イベントの2次予防を評価した試験。

 今回、小島氏らは、MUSASHI試験に登録された患者のうち、総コレステロール値が180〜240mg/dLで冠動脈疾患を持つ患者を対象としてサブ解析を行った。冠動脈インターベンションから96時間以内にスタチン投与を開始した群としなかった群を比較しており、主要エンドポイントは、心血管死や非致死性急性心筋梗塞、再発性心筋虚血、うっ血性心不全、脳卒中などの主要心血管系イベントとした。スタチンの種類は制限しなかった。

 対象は1016人で、スタチン投与群503人(糖尿病患者155人、非糖尿病患者348人)とスタチン非投与群513人(糖尿病患者146人、非糖尿病患者367人)にランダムに振り分け、糖尿病群301人と非糖尿病群715人に再度分類した。解析はPROBE法を、糖尿病の診断基準は国内のものを用いた。

 患者背景については、糖尿病群におけるスタチン投与群とスタチン非投与群の間に、性別、年齢、既往冠動脈疾患、血圧、総コレステロール値、LDL-C値、HDL-C値、喫煙歴などの有意差はなかった。非糖尿病群では、スタチン投与群とスタチン非投与群の間に、総コレステロール値のみ有意差があったがそれ以外に差はなかった。また、C-reactive protein量、心筋梗塞既往歴、脳卒中既往歴、併用する抗血栓薬、硝酸薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARBのいずれについても、糖尿病群、非糖尿病群、スタチン投与群、スタチン非投与群の間で有意差はなかった。

 投与されたスタチンについては、糖尿病群では、プラバスタチンが52.9%、アトルバスタチン38.7%、フルバスタチン5.8%、シンバスタチン1.9%、ピタバスタチン0.7%。非糖尿病群ではプラバスタチン48.3%、アトルバスタチン42.0%、フルバスタチン6.6%、シンバスタチン3.1%だった。スタチン投与量は、いずれも標準的な量だったという。

 解析の結果、糖尿病群の中でもスタチン投与群は有意に総コレステロール値が低下し、観察期間の2年間継続して180mg/dL以下となった。LDL-C値も同様に低下し、観察期間中100mg/dL以下が継続した。HDL-C値については、糖尿病群では有意差はなかったが、非糖尿病群ではスタチン投与群で有意に上昇した。

 イベントについては、糖尿病群、非糖尿病群のいずれでもスタチン投与によって発症割合が低下した。特に、不安定狭心症については、糖尿病群のスタチン投与群で6例、スタチン非投与群で19例となり、非糖尿病群でもスタチン投与群17例、スタチン非投与群で35例と、スタチン投与で有意に低下していた。

 心血管系イベント累積発症率を示すカプランマイヤー曲線による解析の結果、糖尿病群においてスタチン投与群はスタチン非投与群に比べて67%(p=0.002)低く、非糖尿病群では低い傾向にあった(24%、p=0.257)。

 これらの結果から小島氏は、「スタチンの投与によってLDL-C値の低下が観察された一方で、糖尿病群におけるスタチン投与でイベント発症率が大きく減少していることから、スタチンのコレステロール低下作用だけでないプレイオトロピック効果が発揮された可能性が考えられる」と締めくくった。

 この発表のコメンテーターとして登場した滋賀医科大学内分泌代謝内科教授の柏木厚典氏は、「PCI後、標準的な量のスタチン投与でLDL-C値が30%低下し、糖尿病患者の心血管系イベント再発を67%と高い割合で抑制したこの結果は興味深い。今後、どういう因子がプレイオトロピック効果に寄与したかさらに解析されることを望む」としていた。