東邦大学医療センター大橋病院循環器内科の根本尚彦氏

 糖尿病患者では血管断面積に占めるプラークの割合が高まることが知られているが、高インスリン血症耐糖能異常の段階でも、既にプラークが増え始め、肥厚が始まっていることが、血管内超音波検査(IVUS)で直接確認された。東邦大学医療センター大橋病院循環器内科の根本尚彦氏らが、第72回日本循環器学会総会・学術集会のポスターセッションで発表したもの。高インスリン血症や耐糖能異常は冠動脈疾患心血管系イベントのリスクファクターになることを血管内の直接視で裏付けたことになる。

 根本氏らは、同科を受診した、虚血性心疾患でカテーテル治療を行った患者に対し、IVUSによる血管観察と、ほぼすべての例で75gブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施している。このほど、高インスリン血症や耐糖能異常とプラークの状態の関係を明らかにする目的で、後ろ向きの解析を行った。

 まず227人の急性冠症候群(ACS)患者のうち、IVUSを利用しながら血管形成術を行った64人を対象として、高インスリン血症の影響をみた。

 高インスリン血症は、75g OGTT試験で120分後のインスリン値が64.0mU/I以上とした。64人のうち、高インスリン血症(HI)は38例、非高インスリン血症(Non-HI)は26人だった。IVUSによって血管面積(VA)と血管内腔面積(LA)を測定し、VAからLAを引くことでプラーク面積として、関連性を調べた。

 解析の結果、HI群とNon-HI群の間で、年齢、性別、BMI、高血圧、喫煙、総コレステロール値、LDL-C値、HDL-C値、心筋梗塞既往歴、空腹時血糖値などには有意差は認めなかったが、2時間後のインスリン濃度はHI群121.3±68.1mU/I、Non-HI群40.7±11.5mU/I(p<0.001)と有意差があった。

 HbA1cは5.37±0.43%、5.27±0.53%と糖尿病の基準である6.5%以下で、有意差も認めなかった。また、2時間後のグルコース濃度はHI群166.6±42.9mg/dL、Non-HI群131.8±56.1mg/dL(p=0.07)とHI群が高い傾向があり、空腹時インスリン濃度は9.1±3.7mU/I、5.3±2.2mU/I(p<0.001)と有意差が確認された。

 一方、プラーク面積は、HI群が7.5±3.3mm2に対し、Non-HI群が6.0±3.0mm2(p=0.07)と差がある傾向が見られ、血管面積に対するプラークが占める割合も46.4±14.0%、38.1±10.6%(p=0.013)と有意差が確認された。

 これらのことから、糖負荷後2時間のインスリン濃度とプラークが占める割合の間には有意な関連性があり、糖尿病患者でなくても、インスリン自体がアテローム性動脈硬化の進展に寄与している可能性があるとした。

 もう1つの解析では、ACS患者を対象に、HbA1cが6.5%以上だった糖尿病群(DM群)26例、HbA1cが6.5%以下の69例のうち、75g OGTTで空腹時血糖値が126mg/dL以下、120分血糖値が140mg/dL以下の32例を耐糖能正常(NGT)群、それ以外を耐糖能異常(AGT)群として37例に分け、IVUSによりプラーク面積を算出した。

 空腹時血糖値については、DM群177.2±67.4mg/dL、AGT群95.5±15.4mg/dL、NGT群88.3±7.4mg/dL(p<0.01)と有意差が確認され、HbA1cもDM群7.64±1.40%、AGT群5.66±1.05%、NGT群5.14±0.30%(p<0.01)と有意差がみられた。

 IVUSによって測定した血管面積は、DM群14.8±4.1 mm2、AGT群16.0±4.1 mm2、NGT群14.9±4.5 mm2の間で有意差はなかった。血管内腔面積はDM群7.3±3.0 mm2、AGT群8.2±2.2 mm2、NGT群5.7±2.6 mm2と、DM群とAGT群の間、AGT群とNGT群の間にはそれぞれ有意差はなかったが、DM群とNGT群の間には有意差があった(p=0.042)。一方、プラーク面積、血管面積に占めるプラークの割合もDM群とAGT群には有意差はなかったが、DM群とNGT群の間には有意差(p<0.01)が確認された。

 これらの結果から、3群の間で血管面積にはほとんど違いが見られない一方、NGT群のプラーク面積はDM群、AGT群に比べて有意に小さいとし、冠動脈のアテローム性動脈硬化は、糖尿病と診断されない段階でも耐糖能異常によって進行してしまっている可能性が考えられると指摘した。

 根本氏は、「120分後までインスリンが出続けている遅発過剰型インスリン分泌が悪影響を与えているようだ。食後高血糖についてはよく知られているが、高インスリン血症や耐糖能異常がプラークを着々と進展させていることがIVUSによって視覚的に確認された」とし、高インスリン血症や耐糖能異常の改善がプラーク面積にどう影響を与えるか注目したいと語った。