心臓リハビリの普及に努めてきた施設が止めていると伊東氏

 心臓リハビリテーションを中止する施設が相次いでいる。日本心臓リハビリテーション学会の調査によると、2006年の診療報酬の改定後に、少なくとも63施設が心臓リハビリを中止した。これは2005年7月時点の215認定施設の30%に相当する。その中には、日本での心臓リハビリの普及に注力してきた施設も含まれていた。3月15日のセッション「保険医療セミナー:平成18年度診療報酬改定を検証する」で、榊原記念クリニックの伊東春樹氏(写真)が報告した。

 日本循環器学会健康保険対策委員会のメンバーでもある伊東氏は冒頭、「心臓リハビリに対する誤解を解きたい」とし、WHO(世界保健機関)が1968年に定めた定義を紹介した。その中で「患者が可能な限り良好な、身体的・精神的・社会的状態を確保するために必要な行動の総和」である点を強調。特に、行動の総和については、米国公衆衛生局の定義を提示し、医学的な評価、運動処方、冠危険因子の是正、教育およびカウンセリングからなる長期にわたる包括的なプログラムであると説明した。

 その効果は、いくつかの大規模試験で証明されている。たとえば心筋梗塞後患者における運動療法の予後に及ぼす影響を検討した無作為化対象試験では、運動療法を実施した患者群の方が実施しなかった群に比べて、全死亡、新血管死、致死的心筋梗塞などが有意に少ないことが明らかになっている。また、心臓リハビリを行った心筋梗塞患者群と行わなかった心筋梗塞患者群の生命予後を比較した試験では、心臓リハビリを行った患者群の方が行わなかった患者群より死亡が56%も減少したことが報告されている。

 このように効果の高い心臓リハビリだが、診療報酬の面では、1988年に心疾患理学療法の算定が始まり、92年に心疾患リハビリテーション料と名称変更、96年には保険適応疾患が拡大されるなど、徐々にではあるが普及へ向けた国の支援が整ってきていた。

 ところが2006年度の診療報酬の見直しでは、「改悪されてしまった」(伊藤氏)という。主な点を挙げると、算定期間の6カ月間から150日間への短縮、施設認定への面積要件の導入、コメディカル条件の専従へ変更−−などだ。伊藤氏によると、中止した施設のほとんどは、面積要件、専従コメディカルの人数要件を満たせなかったため継続を断念したのだった。医療の普及を下支えするはずの診療報酬制度だが、こと心臓リハビリについては、普及を阻む力となってしまっている現実が浮き彫りにされたセッションだった。