腹部大動脈瘤の形成・進展を抑制する機序を解明する青木氏

 動脈壁に対するアンジオテンシンIIの作用により血管炎症が惹起され、これを介してアテローム性動脈硬化病変や大動脈瘤の形成・進展が促進されると考えられる。大阪大学大学院医学系研究科の青木元邦氏(写真)らは3月17日、ラットモデルを用いた検討により、ARB(バルサルタン)が血管炎症の抑制を介して腹部大動脈瘤の形成・進展を抑制することを報告した。

 青木氏らは、エラスターゼ誘発ラット腹部大動脈瘤モデルを用い、全身血圧に影響を与えない用量のバルサルタンを投与する群(バルサルタン群)およびVehicleを投与する群(Vehicle群)において、大動脈瘤の形成・進展に主要な役割をもつマトリックス・メタロプロテナーゼ(MMPs)などの因子の産生を検討した。

 その結果、1週後において、バルサルタン群の腹部大動脈組織ではMMPs(MMP-2、-3、-9、-12)および細胞接着分子ICAMの発現が、Vehicle群に比べて有意に低下していることが明らかとなった。また、炎症に関連するNF-κBの発現も有意に低下した。さらに、腹部大動脈瘤に関与する炎症細胞であるマクロファージ浸潤が抑制され、興味深い所見として腹腔マクロファージにおけるMMP-2やMMP-9の発現も有意に低下していることが明らかとなった。

 このようにバルサルタン群では腹部大動脈における炎症・線維化の因子が低減され、さらに4週後における動脈壁に対する組織学的検討では、組織の弾力性に関連するエラスチン量がバルサルタン群において有意に高値となることが確認された。

 これらの結果から、青木氏らは、バルサルタンの投与は血圧低下を介さない機序により血管炎症を抑制し、大動脈組織の線維化やエラスチン分解に関連する因子を低減させ、腹部大動脈瘤の形成・進展の抑制に寄与すると結論した。