拡張心不全への移行の抑制が期待できると水田氏

心不全の約30〜50%は左室拡張能障害が要因と言われており、拡張障害の機序として心筋の線維化が注目されている。久留米大心臓・血管内科の水田吉彦氏(写真)らは、これまでラットを用いた検討から、高血圧肥大心において局所RA系の亢進が心筋線維化に関与することを見いだしている。

 今回、水田氏らは、左室拡張能障害を呈する高血圧患者において、血圧コントロールおよび局所RA系の抑制を目的としたバルサルタンによる治療が、心筋線維化の抑制および左室拡張能の改善に寄与するか否かを検討した。

 対象は血圧140/90mmHg以上の高血圧で、正常洞調律かつ左室収縮能正常であるものの、拡張能障害(E/A比1未満)を示す患者57例であった。バルサルタン以外のARBやACE阻害薬を服用中の患者は、対象外とした。これらの患者において、バルサルタンを40〜80mg/日にて投与開始し、血圧140/90mmHg以下を降圧目標として最大160mg/日まで増量し、1年間追跡した。

 心エコーにより左室肥大および左室収縮・拡張能を評価するとともに、integrated backscatter(IBS)法を用いて心筋線維化を評価した。IBS法ではPPI値(1心拍内におけるIB値の変動幅)を心筋線維化の指標とした。

 1年間の追跡が終了し得た43例(63±3歳、男性17例、女性26例)を、治療前のPPI中央値に基づき高線維化群(23例、PPI<5.09)および低線維化群(20例、PPI≧5.09)の2群に分けて解析した結果、両群の血圧値は、高線維化群が治療前166±4mmHgから1年後134±3mmHgに、低線維化群が161±3mmHgから138±3mmHgと、いずれも有意に低下し(各々p<0.05)。また、左室肥大係数(LVMI)も両群とも低下する傾向が示された。

 高線維化群では、治療前に比べ1年後において心筋線維化および左室拡張能が有意な改善を示した。また、低線維化群においても有意水準には達しなかったものの心筋線維化および左室拡張能が改善する傾向を示した。

 以上の結果から、水谷氏らは、左室拡張能障害を伴う高血圧患者に対するバルサルタン治療は血圧低下に加えて心筋線維化の軽減が認められ、同治療が拡張心不全への移行を抑制する上で有用であることが示唆されたと結論した。