心機能および左室リモデリングの改善効果を発表した加藤氏

 ACE阻害薬ARB急性心筋梗塞(AMI)の初期において心機能の悪化進展を改善することが知られているが、梗塞部位別に心機能が異なることに着目し検討された成績は少ない。藤田保健衛生大学循環器内科学の加藤茂氏(写真)らは3月15日、前壁梗塞患者に対する検討から、バルサルタンが梗塞早期の心機能および左室リモデリングを改善し、その効果はACE阻害薬を中心とする対照群に比べて優れていることを報告した。

 AMI直後のランダム化を伴う平行比較試験は倫理上困難なことが多く、従来のケースコントロール・マッチングを用いても期待バイアスが発生しやすいなどの問題があった。そこで、加藤氏らは、バルサルタン(開始用量80mg/日:40〜160mg/日)が投与された急性前壁梗塞の連続患者40例(バルサルタン群;平均64±8歳、男性33例、女性7例)に対する対照群を選出するため、バルサルタン非投与かつACE阻害薬で治療された急性前壁梗塞患者277例から、傾向スコア(Propensity Score)法と呼ばれる方法を用いて40例を選出した。この方法では、背景因子や併用療法がマッチした対照群を選出することが可能であり、比較的容易にランダム化試験に近い比較が可能になるという。

 両群における患者背景は喫煙率以外に差は認められなかった。また、硝酸薬やβ遮断薬、スタチンなど他の治療薬の併用率も両群で同様であった。

 心エコー検査の結果、試験開始1〜4週後にバルサルタン群で有意な収縮末期容積の低下(p=0.035)、駆出率(EF)の上昇(p=0.019)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の低下(p=0.001)、拡張期末容積の低下傾向が認められた。一方、6〜12カ月後には、バルサルタン群における収縮末期容積、拡張期末期容積の低下傾向が認められた。

 また、12カ月間の臨床検査値の変化は両群間で差は認められず、治療の安全性は同等であると考えられた。さらに、12カ月後までの心血管死は対照群において2例発生し、バルサルタン群では0例であった。

 以上の結果から、加藤氏は「バルサルタンは前壁梗塞早期において心機能および左室リモデリングを改善すると考えられ、ACE阻害薬による治療に比べて有用であることが示唆された」と述べた。