バルサルタン治療の明瞭なエビデンスが得られたと小川氏

 3月15日の「Late Breaking Clinical Trial」では、発表者の東京慈恵医大循環器内科の望月正武氏に続いて熊本大循環器病態学の小川久雄氏(写真)がコメンテーターとして、JIKEI HEART スタディの成績について見解を述べた。

 小川氏は、JIKEI HEART スタディは日本人の高血圧患者群を対象とした初めての大規模な臨床試験であり、非常に重要なエビデンスをもたらしたと指摘した。JIKEI HEART スタディでは非常に厳格な血圧コントロールが行われ、最終的な血圧値は試験プロトコルに規定された目標血圧(130/80mmHg)に近く、バルサルタン群では131/77mmHg、従来治療群では132/78mmHgが達成された。両群の降圧幅はほぼ同等であることから、血圧低下以外の機序を介したARBバルサルタンの作用がイベント低下に寄与した可能性が考えられる。

 ARB以外の従来治療にバルサルタンを投与したバルサルタン群において、一次評価項目である複合心血管イベント(脳卒中または一過性脳虚血発作、心筋梗塞、心不全または狭心症による入院、解離性大動脈瘤、下肢動脈閉塞、血清クレアチニン値の2倍化または透析導入)が有意に低下したほか、様々なイベント低下が観察されたが、小川氏は、そのなかで特に日本人において脳卒中や狭心症が減少した意義は大きいと指摘した。

 狭心症による入院が減少した背景には、これまで各種の研究からバルサルタンを初めとするARBに示唆されている内皮機能の改善、線溶系の改善などが関与した可能性が考えられるとした。また、硝酸薬耐性の抑制や冠動脈インターベンション後の再狭窄の抑制などを示唆する知見も得られており、狭心症患者にとってはこれらの臨床的な効果が重要であると考えられると、小川氏は述べた。

 また、脳卒中は日本人高血圧患者にとって最も重要なイベントの1つであるが、小川氏はバルサルタンがもつ内皮機能の改善、線溶系の改善などの多面的作用が脳卒中の抑制に関連する可能性が考えられると指摘した。さらに、心房細動発生の抑制が脳血管障害発生の減少に寄与したと考えられるという。

 いずれにせよ、JIKEI HEART スタディは21施設の120人の心臓専門医が参加し、試験プロトコルを含め実際の臨床状況に近い形で実施された大規模臨床試験である。小川氏は、そのなかでバルサルタン治療の明瞭なエビデンスが得られたことに賛辞を贈った。