たこつぼ心筋症は特に女性に多い疾患だが、エストロゲン濃度の低下が原因の一つである可能性が示された。ラットを使った動物実験で明らかになったもので、3月17日のECS-JCSジョイントシンポジウム「Pathophysiology and Clinical Aspect of Takotsubo Disease」で、和歌山県立医大の上山敬司氏が発表した。

 上山氏らは、たこつぼ心筋症が閉経後の女性にも目立つことからホルモンの関与を疑い、その解明を目指し実験を重ねてきた。たこつぼ心筋症が身体的あるいは精神的なストレスで誘発されることが少なくないことを踏まえ、実験では、Kvetnanskyらが報告したラットのストレスモデルを用いた。上山氏らは、このモデルで、たこつぼ心筋症で見られる心電図や左室造影の所見を再現することができ、またアドレナリン受容体拮抗剤により、こうした所見を抑制することができることを確認した。

 その上で実験では、エストロゲンを補充することにより、ストレスで誘発される心電図や左室造影の所見がどのような影響をうけるのかを検討した。その結果、エストロゲン補充で、ストレスで誘発された左心室機能障害(特に頻脈)を抑制し、中央交感神経細胞におけるニューロンの活性を抑えることもできた。また、副腎や心臓における細胞活性を抑え、心臓保護効果があるHSP70やANP濃度を上昇させる効果も確認された。

 これらの結果を踏まえ上山氏は、更年期の後に続くエストロゲン濃度の低下は、神経系への間接作用あるいは心臓への直接作用によって、たこつぼ心筋症の発症に関与していることを示唆すると結論付けた。

(注)たこつぼ心筋症は、胸痛や心不全などの急性心筋梗塞症様の臨床所見が見られるが、心臓カテーテル検査では冠動脈に狭窄や閉塞などの異常所見がない。左室造影で心尖部に一過性の高度な収縮不全を認める症例があり、その収縮異常の形態的特徴から「たこつぼ型心筋症」と呼ばれている。1990年に佐藤光氏らが世界で初めて報告した。最近では、新潟大医学部の調査により、2004年の新潟県中越地震の直後、被災地の女性に、たこつぼ心筋症が多発していたことが明らかになった。