「治療のターゲットとなる臓器によって使い分けを」と野中氏

 ACE阻害薬とARBでは、線溶系の阻害タンパクであるPAI-1の概日リズムに及ぼす影響が臓器によって異なることが動物実験で明らかになった。神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学の野中英美氏(写真)と横山光宏教授ら研究グループが3月15日、ポスターセッション(英語)で発表した。
 心筋梗塞の発症は早朝に多いなど、循環器疾患の発症には日内変動があると言われ、それには血液の線溶活性を阻害するPAI-1 (プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1) の概日リズムが関与すると考えられている。
 研究グループは、野生型マウスとAT1受容体欠損マウス(AT1KO)、時間遺伝子mCry1/mCy2 二重欠損マウス(CrydKO)を使って、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)と生体時計およびPAI-1発現の関係を調べた。
 その結果、時計遺伝子の概日リズムは、CrydKOを除いて野生型とAT1KOの肺と腎臓で見られたが、血漿PAI-1値は、CrydKO だけでなくAT1KOでも、概日リズムは乱れており、PAI-1発現の概日リズムは、生体時計システムとRAASの両方に制御されていることが確認された。
 続いて、RAASを抑制するACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を野生型マウスに投与したところ、ACE阻害薬群では血漿PAI-1値は対照群に比べて低く、PAI-1遺伝子発現も肺、腎臓ともに対照群に比べて低くなった。
 一方、ARB群では血漿PAI-1値は平均的には低くなったが、マウスの活動時間帯ではPAI-1抗原レベルが対照群よりも高くなった。またPAI-1遺伝子発現も腎臓では高い傾向が見られ、線溶活性の概日リズムにおいて、ACE阻害薬とARBの作用の違いが示された。
 この違いについて野中氏は、ACE阻害薬とARBのどちらが良いというのではなく、人では治療のターゲットとなる臓器によって使い分ける、あるいはACE阻害薬とARBを併用する方向で検討できるのではないかなどと語った。