生活習慣を是正させるコツを語る坂野氏

 健康指導では体重や血圧などの目標値を定めることが多い。しかし数値目標は生活改善の動機付けにはならず、具体的な行動目標を細かに立てる方が、結果として目標値に達しやすい−−。認知行動療法に詳しい北海道医療大学心理科学部教授の坂野雄二氏(写真)は3月15日、行動を「変容」させ、生活習慣を是正させるコツをコメディカルセッションで話した。
 高血圧や高脂血症、糖尿病など、いわゆる生活習慣病は、食習慣や運動など日常の習慣を見直せば改善が可能な疾患だが、習慣を変えることは難しく、患者の指導は容易ではない。
 坂野氏によれば、従来の健康指導は、(1)生活上の良くない点を指摘して改善を促すという一方的な指導であり、「塩分を控えよう」、「運動をしましょう」というだけで改善のための具体的な手がかりが提案されていないという。そのため一度は改善しても、指導期間が終われば元に戻ってしまう。
 セッションでは、認知行動療法に基いた健康指導プログラムのポイントを幾つか紹介した。その一つが目標設定。例えば体重を毎日測るという簡単な課題でも、体重計にのる習慣のない人が、毎日体重計にのって、数字を読み、それを記録することは、複数の課題を与えていることになるという。
 坂野氏の方法は、まず体重計にのることを習慣として身につけさせることから始める。毎日体重計にのることだけを3カ月間続け、のったかどうかを毎日記録する。3カ月後、遂行度を見て、その後の目標行動を決定する。
 目標行動は、具体的に、塩分を控えるときは「漬物は小皿に盛り付ける」、運動をするときは「3階までは階段を使う」などとし、本人に設定させる。

 指導者の方は、できた点を積極的に賞賛し、悪い点を指摘することは控える。また遂行した時にすぐに次のステップに進むのではなく、できた状態を維持することに重点を置き、どんな状況でもできるか繰り返し確認してから、次のステップに進むようにするという。
 坂野氏らは、ある自治体で行われた基本健康診査で、血圧などが「要指導」と判定された人のうち605人に、こうした健康指導プログラムを実施した。1年間のプログラムで脱落は55人と少なく、血圧は顕著に改善したという。
 またセッションに中で、広島大学心理臨床教育研究センター助教授の鈴木伸一氏は、東京女子医科大学循環器内科の患者169人を対象とした調査で軽症以上のうつ傾向のある人が4割に及ぶと報告。特にICD植込み患者では不安症状が強く、今後、同施設で、認知行動療法を取り入れたプログラムを実施していくと話した。