村崎かがり氏(左)と学会発表した島谷有希子氏

 機械心臓弁置換手術を受けた患者へのワーファリン投与の目安となるINR(International Normalized Ratio)値は、日本人の場合、欧米の推奨値よりも低い方がリスクが少ないことが明らかとなった。具体的には、日本人の場合は2.0以上3.0未満に設定することが、出血と梗塞のリスクが低いことが分かった。これは東京女子医大循環器内科の村崎かがり氏らの研究グループが患者を長期にわたって追跡調査し明らかにしたもの。3月16日のFeatured Research Session23で発表された。
 村崎氏らの研究グループは、連続した550症例について約10年間の追跡調査を行った。患者の90.2%がINR値が1.5から2.5の範囲に収まっていた。梗塞など虚血性イベントは64例で起こり、出血性イベントは44例で起きた。全死亡数は17例でこのうち5例が出血死だった。
 INR値と虚血性イベント、出血性イベントの関係を調べたところ、INR値が2.0以上2.5未満のリスクを1とすると、それより低値では虚血性イベントのリスクが高まり、INR値が1.5以上2.0未満で2.05、INR値が1.5未満だと3.32となった。一方、高値では、出血性イベントのリスクが高まり、INR値が2.5以上3未満で3.81、INR値が3以上で4.04となった。欧米の推奨されているINR値は2.5以上3未満だが、この値では日本人には出血リスクが高いことが明らかとなった。村崎氏は「日本人は梗塞のリスクは元々高くないので、出血のリスクをより低くした方がよい」などと指摘した。
 研究グループは、INR値が2.5よりも高いこと、より高齢であること、心不全による入院の履歴のそれぞれが出血性イベントに関する独立したリスク因子であることも見い出した。また血清アルブミン値が4.0g/dlであることが、独立した防御因子であることも明らかにした。