救急における救命の連鎖が年々円滑に機能し、1年生存率も上昇しつつあることが、日本循環器学会の最終日「Emergency Care」のセッションで報告された。国立循環器病センター心臓血管内科の石見拓氏らは、大阪府内の現状を発表し、救急車の到着前の心肺蘇生法(CPR)の実施率をさらに上げ、単純化した蘇生法の開発が必要であると訴えた。

 心臓突然死は年間2〜3万件発生しているといわれるが、その多くは病院外で起こり、救命される割合は低い。そのため早い通報、早い応急手当、早い救急処置、早い医療処置という救命の連鎖の普及が進められている。

 石見氏(写真)らの研究グループは「ウツタイン大阪プロジェクト」として、1998年5月1日から大阪府全域で発生した心停止症例の記録収集を開始した。今回の発表では、2003年3月31日までの5年間のデータを報告した。分析では、18歳以上で蘇生が施行された2万3046人中、心原性の心停止例が1万3247人あり、その中で、心停止した現場を家族などにより目撃された4826人を対象とした。

 その結果、患者数は毎年約1000人、平均年齢は70歳で、女性の割合は4割だった。自宅での発生が7割と最も多く、公共スペースは約14%、職場が4%と続く。現場で目撃者による心臓マッサージと人工呼吸が実施されたのは5年間の平均で16%、心臓マッサージのみが11%と少なかったが、この割合は年々上昇する傾向にあり、2002年度(2002年4月〜2003年3月)ではCPR実施率は33%だった。1年生存率も2000年度では3.6%だったが、2002年度では6.5%に増加、社会復帰した割合も2.5%から3.7%に増えていた。

 このほか、関東の58救急医療機関が参加しているSOS-KANTO委員会からは、1カ月後の良好な脳機能に寄与するのは、早期発見(オッズ比は2.37)と、目撃者(bystander)によるCPR(同1.62)、早期の除細動(同10.1)だったと報告された。東京都では救急車の出動数が増え、トリアージ制度が導入されるようになっている。発表した駿河台日本大学病院の菊島公夫氏は、目撃者によるCPRの実施とともに、公共の場に自動対外式除細動器(AED)を設置することが必要であると話した。公共施設でのAEDの設置は各地で進んでおり、大阪府では今年4月から民間の社会福祉施設に対し、AEDの設置費用の半額を助成する制度が実施される。