「妊娠中の睡眠時無呼吸症候群(SAS)の発症は、母体よりも胎児に悪影響を及ぼしやすい。産科で妊婦SAS検診を導入して早期にCPAP治療を開始し、母体の低酸素血症を防ぐことで、胎児を守ってほしい」。愛知医科大学睡眠医療センターの塩見利明教授は、日本循環器学会のMeet the Expert「循環器疾患と睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の中でこう話した。

 SAS患者は男性に多く、治療も男性に焦点を当ててきた。しかし、女性においても閉経後の冠動脈疾患や妊娠高血圧の原因の一つである。また、妊娠期には体重増加に伴い、脂肪が上気道を狭めるために閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)が生じやすく、睡眠中の低酸素血症により、「着床障害などによる不妊や、流産、妊娠高血圧、母体側低酸素性胎盤機能不全を生じやすい」と、塩見氏は「Gender Differences in Sleep Apnea Syndrome (SAS): Two Problems about Pregnancy and Menopause」と題した講演で話した。

 実際に塩見氏がSAS患者8人(26〜36歳)について調べたところ、複数の流産歴や子供に広汎性脳障害が生じた例もあったことがわかった。また重症のSAS患者が通院中に妊娠したが、CPAP治療を続け、無事に出産して子供にも異常は見られなかったという。こうした例から妊娠期のSAS発症を産科でも認識し、早期に治療を開始することが必要ではないかと提案した。

 また妊婦の約1割に見られるという高血圧症に対しても、ACE阻害薬やARBの服用が基本的には勧められていない現状において、SAS治療で一定の効果を期待できるのではないかとも述べた。