愛媛大学第二内科の渡邊早苗氏らは、以前に、左室肥大またはインスリン抵抗性を有する本態性高血圧患者では、動脈壁の膨張性や拡張期灌流の低下が認められることを報告した。これらは動脈硬化の進展に関与すると考えられている。一方、最近ではARBが動脈壁硬化を改善することが脈波伝達速度(PWV)の評価により示唆されている。

 同氏らは、本態性高血圧患者に対してバルサルタンを長期投与することで、動脈壁硬化を改善し、冠動脈イベント発症を抑制しうることを報告した。

 今回対象としたのは本態性高血圧患者24例(男性13例、女性11例、平均年齢65歳、治療前平均血圧160/89mmHg)で、バルサルタンは40〜80mg/日投与した。投与前、投与12カ月後、同24カ月後に血圧と脈拍、Bモードエコーにより内膜-中膜厚(IMT)、プラークスコア(PS)、cross-sectional distensibility coefficient(CSDC)、stiffness β、Vd(平均拡張速度)/Vs(平均収縮速度)ratioを評価した。

 その結果バルサルタン投与により、投与12カ月後および24カ月後の血圧はそれぞれ、143/80mmHg、141/82mmHgと有意に低下した(p<0.05)。平均IMT、および最大IMT、PSには治療前後で有意な変化は認められなかった。

 また、治療前に比べ治療12カ月後のCSDCには有意な変化は認められなかったが、治療前および治療12カ月後に比べ治療24カ月後のCSDCは1.84±0.93×10-3/mmHg、2.03±1.03×10-3/mmHg→3.05±1.81×10-3/mmHgと有意に上昇していた(p<0.05)。

 stiffness βは治療前と治療12週後では有意な変化は認められなかったが、治療前に比べ治療24週後には12.8±9.2→8.6±5.1と有意に低下していた(p<0.05)。治療前に比べ、Vd/Vs ratioは治療12週後には有意な変化は認められなかったが、治療24週後には0.47±0.11→0.50±0.11と有意に上昇していた(p<0.05)。

 これらの結果から渡邊氏は、バルサルタンの長期投与は動脈壁硬化および血行動態を改善し、本態性高血圧患者の冠動脈イベント発症を抑制しうると述べた。(中野哲史、医学ライター)


訂正 本文の第3〜第6段落に投与後の治療期間などとして、「12週後」「24週後」とありましたが、いずれも「12カ月後」「24カ月後」の誤りでした。お詫びして上記のように訂正いたします。