「再生医療は今、大きな壁に当たっているが、細胞のinjury、cell death、repair、そしてregenerationをひとつの現象として捉えることで、再生医療を臨床における究極の医療にしていきたい」―。第70回記念日本循環器学会総会・学術集会の会長で岐阜大学再生医科学循環病態学教授の藤原久義氏は、「Regeneration Medicine as the Ultimate Medicine」と題した会長講演の中でこう話した。

 講演の中で藤原氏はG-CSF(granulocyte colony stimulating factor:粒球コロニー刺激因子)を使った研究を紹介した。研究グループでは、拡張型心筋症の動物モデルでG-CSFが骨髄細胞の分化を促進して、心機能を改善することをすでに確認している。心筋梗塞患者や狭心症患者においても、G-CSFを10日間、皮下注射することで、血流が改善し臨床症状も良くなった。また閉塞性動脈硬化症の患者においてもG-CSFの皮下注射で痛みが軽減し、「トイレに行けなかった人が行けるようになったり、数mしか歩けなかった人が50m歩けるようになった」という。ただ、「これらは限られた効果であり、幹細胞から心筋細胞や血管に分化するのはまれで、心機能や心リモデリングの改善の度合いは当初期待していたものより小さい」とも話す。

 「いま再生医療は、in vitroで成功したものがin vivoではできないという深刻な限界にあるが、injury、cell death、repair、regenerationといった一連の細胞のメカニズムもいずれ解明され、近い将来、in vivoでも再生医療は可能になるだろう。そのときこそ再生医療が究極的な医療になる」と語った。座長の河合忠一氏(武田総合病院)も、「再生医療はいま扉が開かれたばかりだ。会場の研究者の方々もぜひ、今後の研究で良い成績を出してほしい」と話し、講演を締めくくった。