ペリオスチンは骨分化に影響するたんぱく質として知られているが、大阪大学臨床遺伝子治療学の家串和真氏らは、左心室におけるペリオスチンの過剰発現が心拡大と心機能低下を惹起し、培養系では細胞の接着や伸展を抑制することを認めている。ペリオスチンは細胞間の接着を強力に阻害することにより、細胞間にslippageを惹起し、心臓のリモデリングを誘導すると考えられる。また、バルサルタンはVALIANT試験により急性心筋梗塞後(AMI)の心保護作用が明らかにされているが、ペリオスチンとの関与については不明である。家串氏らは心筋梗塞後(MI)のバルサルタン投与による心保護効果について検討し、同薬によるペリオスチン発現抑制がMI後の心保護効果に関与しているのではないかと述べた。

 同氏らは、培養心筋細胞と線維芽細胞にAIIと機械的伸展刺激を負荷し、ペリオスチンのmRNAの発現について検討した。その後バルサルタンを投与し、同様の刺激を負荷して同薬のペリオスチンの発現抑制効果を検討した。心筋細胞および線維芽細胞において48時間・10-6MのAII刺激を負荷した結果、ペリオスチンの発現はコントロール群に比べ有意に多く認められた。また、バルサルタンはこのAII刺激によるペリオスチンの発現をほぼ完全に抑制した。一方、機械的伸展刺激による発現は部分的にしか抑制されなかった。

 次に、signaling kinase阻害薬を投与し、AII刺激によるペリオスチン発現の細胞内シグナルの検討を行った。その結果、AII刺激により心筋細胞ではPI3KおよびJNK経路、線維芽細胞ではPI3K、JNKおよびP38の経路を介して、ペリオスチンの発現が上昇することが認められた。

 さらに、ラットAMIモデルにおける検討では、ペリオスチンは非梗塞部に比べ梗塞部で有意に発現が上昇していた。また、血圧を低下させない程度のバルサルタンの少量投与(5mg/kg/日)によりAMI後の心拡大および心機能低下が改善され、ペリオスチンの発現が抑制することが認められた。

 以上より家串氏は、バルサルタンのペリオスチン発現抑制効果が、MI後の心保護効果に関与している可能性が示唆されたとした。