器質的狭窄のない冠攣縮性狭心症では、血管内皮機能の低下に関与する遺伝子T-786の変異が患者が再入院するかどうかの目安になることを、熊本大学大学院医学薬学研究部循環器病態学助教授の吉村道博氏を中心とした研究グループが明らかにした。この成果は第70回記念日本循環器学会総会・学術集会で発表された。

 虚血性心疾患において日本人では冠攣縮の発生頻度が欧米人に比べて3〜4倍も高く、その背景には遺伝子要素が関わるといわれている。同研究グループは、血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子がその一つであることを明らかにしている。今回の研究対象は冠攣縮性狭心症で入院したことのある患者265人、年齢はおよそ62.5歳。フォローアップ期間は平均72.5カ月。この間、再入院したのは41人。患者の9割以上がカルシウム拮抗薬を服用しているが、なお胸痛を感じ再入院した人が約2割を占めたことになる。

 遺伝子多型で分けると、-786T/Tが200人、-786T/Cが60人、-786C/Cが5人だった。再入院した41人のうち、-786T/Cの遺伝子変異があったのは39%で、再入院しなかった224人では22%と少なかった。また器質的狭窄の有無で比べると、器質的狭窄のある冠攣縮性狭心症では、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症が再入院と関連性のあることが示された。一方、器質的狭窄のない冠攣縮性狭心症では、-786T/C遺伝子変異が再入院者では48%、非再入院者では24%に見られ、この遺伝子変異が再入院に強く関わっていることがわかった。

 この結果から、発表した西嶋方展氏(写真)は、「-786T/C遺伝子多型は器質的狭窄のない患者が再入院する要因のひとつである」と結論づけていた。