関節リウマチ(RA)患者には、生物学的製剤を使用してもなお、一定の割合で人工関節手術に至る症例が存在する。薬物治療で疾患活動性を抑えられれば、手術による身体機能の改善は効果的だが、手術に至る患者の多くは多関節障害があり、現在の治療効果判定尺度では十分に捉え切れていない可能性があるという。名古屋大学整形外科の小嶋俊久氏らが、4月18日から20日に京都で開催された第57回日本リウマチ学会(JCR2013)で、生物学的製剤使用下における人工関節手術の位置付けと課題について講演した。

 小嶋氏らは、名古屋大学を中心とした地域RA患者レジストリのTBCR(Tsurumai Biologics Communication Registry)に2003年8月から2011年9月に登録され、1年以上追跡可能だったRA患者1841例のうち、生物学的製剤使用中に人工関節置換術を実施した患者97例127関節を解析、生物学的製剤導入時の背景が人工関節置換術発生に及ぼす影響を検討した。

 多変量解析の結果、年齢、罹病期間、DAS28-ESR、メトトレキサート非併用が人工関節置換術発生の有意な影響因子として同定された。小嶋氏は、「関節破壊が進行してから生物学的製剤を導入された患者、あるいは薬物療法が有効でないか、薬剤の使用が不十分な患者が人工関節の手術に至っていることを示唆している」という。

 次に、2008年5月までに名古屋大病院でTNFα阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト)を投与開始した患者156例を平均5年間追跡し、全人工膝関節置換術(TKA)の発生を指標として、生物学的製剤の中長期的効果を検討した。

 追跡開始時点で膝症状を有する患者と症状がない患者に分け、疾患活動性の指標としてベースラインのDAS28を比較したところ、膝症状を有する患者群では疾患活動性が有意に高かった。膝症状を有する場合、ほぼ半数(48.9%)は、Larsen分類がIII〜IVと関節破壊の進行例だった。

 Larsen分類0〜II群とIII/IV群について、カプランマイヤー法でTKA発生率の推移を比較したところ、0〜II群に比べてIII/IV群はTKAに至る期間が有意に短かった(34.8カ月 対 17.9カ月、P<0.001)。またIII/IV群の約8割は、生物学的製剤の投与開始時にすでに関節破壊が進行していた。

 一方、0〜II群では、最終観察時に6割で膝関節炎が消失しており、膝症状が残っている症例でもDAS28-CRPが平均2.82と、十分に疾患活動性がコントロールされていた。しかし、関節裂隙狭小化を評価すると、膝関節炎が消失していても軟骨破壊が徐々に進行する例が3割近くに認められた。こうした患者も長期的には手術に至る可能性がある。

 小嶋氏は、「術前に、CRPが0.5mg/dL以下といった低い炎症レベルにできれば、術後には7割程度が臨床的寛解に達する。このような症例では障害は少数の関節に限られ、手術によって身体機能障害を改善する意義は大きい」という。

 しかし、RAの日常診療においては、手術に至る多くの患者は、多関節に障害を持っているのが現状だ。下肢大関節の関節破壊が進行しているほど、上肢関節の障害度も大きい傾向がある。

 こうした多関節障害例では、従来の機能評価尺度では適切な評価ができない場合があり、患者満足度の高い治療を行うためには注意を要する。

 例えば、身体機能障害度を示すHAQスコアとその簡易版であるmHAQスコアの差は、障害度が重くなるほど乖離することが報告されている。これは、mHAQでは省かれた部分の機能障害が進むためだ。

 逆に障害度が軽く、治療により機能的寛解とされるHAQ<0.5を達成しても、患者満足度が十分とは限らない。患者全般評価値(0−100mm)と上肢の機能障害指標であるDASHスコア(0−100)の関連を見た研究で、DASHが2以上になると患者全般評価が10mmを下回らなかったと報告されている。患者全般評価が10mmを超えると、欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が新たに提示した最も厳しい寛解基準であるBoolean寛解を満たさない。

 小嶋氏は、「より高い治療効果判定には、身体機能評価やQOL、抑うつ、労働生産性などを含む患者評価によるアウトカムが不可欠だ。今後、特に多関節障害を持つ患者に対する治療効果の判定方法を検証していく必要がある」とした上で、「患者の状態に合わせた適切な機能評価の上で実施する手術療法は最高の局所療法だ」と講演を締めくくった。