生物学的製剤を使用中の関節リウマチ患者を対象とした登録研究で、リンパ増殖性疾患の標準化罹患比(SIR)が1000患者・年当たり約13と既存の研究成果よりもやや高い結果が報告された。発症例の半数超が生物学的製剤の投与開始2カ月以内の超早期に診断されており、過去の薬剤投与が関連した可能性がある。生物学的製剤が既に存在するリンパ増殖性疾患に促進的な影響を与える可能性もあるため、生物学的製剤の投与開始に当たっては既存リンパ腫の存在に留意し、詳細に病歴を聴取すべきだという。名古屋大学整形外科の高橋伸典氏らが、4月18日から20日まで京都で開催されている第57回日本リウマチ学会(JCR2013)で発表した。

 関節リウマチ患者は、もともとリンパ腫の発症リスクが高く、特に高疾患活動性の場合、合併リスクが高まることが知られている。また、メトトレキサート(MTX)使用とリンパ増殖性疾患の関連も指摘されている。生物学的製剤については、TNF阻害は悪性腫瘍合併リスクを上昇させないとする報告が大勢を占める。また、アバタセプトが悪性腫瘍リスクを上昇させるとした報告はない。

 そこで高橋氏らは、名古屋大学を中心とした関節リウマチ治療における生物学的製剤使用の登録研究であるTBCR(Tsurumai Biologics Communication Registry)に登録された症例データ1933例(4670患者・年)を対象に、リンパ増殖性疾患の発生状況を調査した。

 対象のうち、生物学的製剤使用中にリンパ増殖性疾患を発症した症例は、男性2例、女性7例の合計9例だった。この9例は平均年齢が65歳、関節リウマチの平均罹病期間は16.4年で、全例にMTXの使用歴があった。使用していた生物学的製剤は、7例がTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ)、2例がT細胞選択的共刺激調節薬のアバタセプトだった。

 リンパ増殖性疾患の組織型は、胸腺原発びまん性B細胞性大細胞型リンパ腫が6例、MALTリンパ腫が1例、不明(脾腫・生検なし)が2例だった。発症部位は、節性が6例、節外性として肺に2例を認めた。骨髄浸潤を認めたのは4例、認めなかったのは4例で、不明1例だった。病理・EBウイルス小分子RNA(EBV encoded small RNA:EBER)陽性は4例、陰性3例、不明2例だった。

 1000患者・年当たりの罹患比(IR)は1.93だった。MTX併用患者に限ると、IR=2.93とやや高くなった。男女別に検討したところ、女性が1.85、男性が2.78と、男性でやや高かった。

 SIRは全体で13.17だった。また、男性では9.94、女性では10.82だった。国立病院機構のNational Datebase of Rheumatic Diseases by iR-net in Japan(NinJa)レジストリでは、悪性リンパ腫のSIRが男性2.8、女性6.6と報告されている。また、台湾の国民健康保険データベースにおける非ホジキンリンパ腫のSIRも3.54と、本研究よりも低かった。

 生物学的製剤の使用開始から、リンパ増殖性疾患を発症(発見)するまでの期間は平均6カ月だったが、9例中5例は2カ月以内の超早期で発見された。レトロスペクティブに聴取・検討したところ、超早期にリンパ増殖性疾患を発症した5例のうち3例に、リンパ増殖性疾患の既往を疑うエピソードが存在した。

 これらの結果から高橋氏は、「現時点で生物学的製剤自体がリンパ増殖性疾患の発症リスクを高めるというエビデンスはない。TBCRにおけるSIRは、他の類似のレジストリよりも高かったが、本研究におけるリンパ増殖性疾患の発症者は全例がMTX使用症例であるため、MTXに関連したリンパ増殖性疾患として考えるべきかもしれない」と述べた。

 また、「生物学的製剤導入後、超早期に悪性リンパ腫を発症する症例は、もともとリンパ増殖性疾患を有する可能性がある。ただし、生物学的製剤が既に存在するリンパ増殖性疾患に促進的な影響を与えることも否定できないので、生物学的製剤導入時には、リンパ増殖性疾患の存在に留意し、詳細に病歴を聴取すべき」と強調した。