東京女子医科大学の神戸克明氏

 生物学的製剤の登場で関節リウマチRA)の寛解率は大きく向上した。しかし、その後のバイオフリー寛解ドラッグフリー寛解の可能性を予測することは容易ではない。東京女子医科大学の神戸克明氏らは、インフリキシマブIFX)治療によりバイオフリー寛解、ドラッグフリー寛解を達成したRA患者のほとんどが、ACR/EULARのBoolean基準による寛解を達成していたことを報告し、Boolean基準による寛解の達成がバイオフリー寛解、ドラッグフリー寛解の予測に役立つ可能性を示唆した。研究成果は、4月26日から28日に東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)で発表された。

 対象は、神戸氏らの施設で生物学的製剤の投与を受けたRA患者919人(うち女性711人)。生物学的製剤開始前の平均年齢は64.5歳、平均罹病期間は12.9年、MTX平均投与量は6.14mg/週、患者全般評価VASは5.94cm、CRPは1.32mg/dL、DAS28-CRPは4.67だった。

 投与された生物学的製剤の内訳は、インフリキシマブ(IFX)388例、エタネルセプト(ETN)197例、トシリズマブ(TCZ)208例、アダリムマブ(ADA)73例、アバタセプト(ABA)53例だった。これらの患者の生物学的製剤治療による寛解率は、従来のDAS28による基準(DAS28-CRP<2.3)で37.4%(24週)、35.4%(52週)であった。

 しかし、同じ患者をCDAIによる基準(CDAI≦2.8)で評価すると、寛解率は10.4%(24週)、11.5%(52週)となった。同様に、SDAIによる基準(SDAI≦3.3)では17.4%(24週)、20.6%(52週)、Boolean基準(腫脹関節数、圧痛関節数、患者全般評価VAS〔cm〕、CRP〔mg/dL〕がすべて1以下)では10.4%(24週)、12.2%(52週)と、いずれもDAS28-CRPによる評価と比べて低い寛解率となった。

 また、神戸氏らは、IFXで治療中の患者に対し、「CRP、MMP-3、圧痛関節、腫脹関節がすべて陰性の状態が6カ月以上持続」という基準を満たせばIFXを休薬し、バイオフリー寛解、さらにドラッグフリー寛解を目指す試みも行っている。これまでに212例中34例(16%)がバイオフリー寛解を達成、11例(5.2%)がドラッグフリー寛解を達成した。

 興味深いことに、これらの患者の寛解率をBoolean基準で再評価すると、バイオフリー寛解達成者の94%、ドラッグフリー寛解達成者では実に全例がBoolean基準による寛解例であった。

 以上の結果から、ACR/EULARの新RA寛解基準は、CDAI、SDAI、Boolean基準のいずれも従来のDAS28による基準より厳しいが、IFXによる治療でBoolean基準の寛解を達成できれば、バイオフリー寛解やドラッグフリー寛解を達成できる可能性が濃厚であることが示された。すなわち、ACR/EULARの新RA寛解基準は、バイオフリー寛解やドラッグフリー寛解を現実的な目標としたこれからのRA治療において、有用な基準だと考えられた。

 ただし、神戸氏らの症例には、Boolean基準では寛解に相当するものの、腫脹関節と疼痛関節が1カ所だけ残っており、医師全般評価VASも反映されるCDAIやSDAIによる基準では寛解に該当しない症例や、特定の動作時に運動痛を伴う症例なども見られたという。「そうしたケースについては、滑膜切除術などを併用し、患者の満足度をさらに高めることを目指すべきだろう」と神戸氏はまとめた。

(日経メディカル別冊編集)