横浜市立大学の寺内佳余氏

 ベーチェット病は現時点では根治法がなく、症状を有する患者には眼発作の予防と視力の維持を目指した治療が行われる。眼症状を有するベーチェット病患者へのインフリキシマブ(IFX)治療により、視力の維持が期待できるが、それだけに留まらず、視力の改善が得られた症例についても報告されている。横浜市立大学の寺内佳余氏らは、IFX治療による視力改善に発作頻度の抑制などが関与していること、IFXの血中濃度低下に起因する再燃がみられる場合には投与間隔の短縮が有効であることなどを報告し、注目を集めた。研究成果は4月26日から28日まで東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)で発表された。

 今回の検討では、横浜市立大学附属病院でIFX治療を行ったベーチェット病による網膜ぶどう膜炎患者20人を対象とした。患者の平均年齢は39.9±12.1歳、17例が男性だった。原則として、IFX導入時にシクロスポリンなどの免疫抑制薬は中止したが、コルヒチンは経過に応じて中止した。

 視力予後の解析は、IFX治療を6カ月以上継続した18症例の評価可能な34眼を対象とした。症例単位での評価に際しては、同じ患者で片方の眼が改善し、もう一方の眼が悪化するというケースもあるため、少なくとも1眼が改善し、もう1眼が改善または不変であった場合を「改善」、両眼とも不変であれば「不変」、どちらか1眼でも悪化がみられた場合を「悪化」とした。

 観察期間中の最終視力については、34眼中16眼で治療開始前より改善していた。症例単位の評価では、18例中9例が改善、3例が不変、6例が悪化であった。

 6カ月当たりの平均眼発作回数は、IFX導入により2.67回から0.41回へと減少した。IFX導入後の症例単位の視力評価で「改善」または「不変」だった群(12例)と悪化した群(6例)に分けて比較検討したところ、改善・不変群ではIFX導入後の発作頻度がより低く、悪化群との間に有意な差が認められた(0.23回/6カ月 対 0.80回/6カ月、P<0.05)。すなわち、改善・不変群ではほぼ確実に眼発作が予防できており、その結果として視力低下の抑止につながったものと示唆された。

 しかし、それだけでは視力の「改善」は説明できない。そこで寺内氏らは手術の影響に着目した。眼症状を伴うベーチェット病患者では、疾患活動期に眼科手術を行うと眼発作を誘発するおそれがあるため、眼科手術は相対的禁忌とされる。そのため、今回の対象患者でも18例中8例の14眼が白内障や緑内障などを有していたが手術を見合わせていた。

 これら8例は、いずれもIFX治療によって疾患活動性が低下した後に手術を受け、14眼のうち8眼(57%)は手術により視力の改善を得た。1例にアデノウイルス感染症の合併がみられたが、手術により眼発作が誘発されることはなかった。寺内氏らは、IFX治療により、炎症を強力に抑制することで眼科手術を安全に行い得たことが、視力の回復要因の1つになったと推察した。

 また、近年IFX治療の課題の1つとして、血中濃度低下による眼発作の再燃が挙げられている。今回のフォローアップ中に認められた眼発作は、IFX投与予定の2週間前以内に集中しており、ピークはIFX投与予定の週だった。すなわち、IFXの血中濃度がトラフ(投与直前)値に近づいた時期に眼発作が認められていた。

 そこで寺内氏らは、眼発作の程度や頻度に応じてIFXの投与間隔を短縮することとした。今回の18例については、通常の8週間隔から、3例を6週間隔、5例を5週間隔に短縮した。

 その結果、これらの患者の6カ月当たり平均眼発作回数は、短縮前の0.84回から0.37回へと有意に減少した(P<0.05)。この検討結果について寺内氏は、「眼発作の再燃要因の1つはインフリキシマブの血中濃度低下であり、その対策として投与間隔の短縮は有効であることが示唆された」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)