慶應義塾大学の仁科直氏

 メトトレキサートMTX)による治療を開始した関節リウマチRA)患者において、MTX開始後も血中TNFαは低下せず、MTX開始前の血中TNFαが高いほどMTX治療抵抗性になりやすく、関節破壊の進行も速いという研究結果が示された。慶應義塾大学の仁科直氏らが、4月26日から28日に東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)で発表した。

 TNFαやIL-6などのサイトカインはRAの病態に深く関わっていると考えられており、生物学的製剤はこれらを抑制することで治療効果を発揮する。一方、RAの第1選択抗リウマチ薬(DMARD)であるMTXがこれらサイトカインに対してどのような影響を与えているかは十分に知られていない。

 そこで仁科氏らは、初発無治療RA患者におけるMTX開始前後の保存血漿サンプルを用いて血中TNFαと血中IL-6を測定し、MTX治療開始に伴うサイトカインの変化を調べるとともに、治療前後のサイトカインの変化と治療アウトカムの関係をレトロスペクティブに解析した。

 対象は、慶應義塾大学病院における初発無治療RA患者登録データベースであるSAKURAコホートの登録患者で、RAの推定罹病期間3年以内にMTX治療が開始され、治療開始前および治療開始後3カ月以上経過時点の血漿サンプルが得られた62例とした。なお、治療開始後のサンプル採取までに生物学的製剤が開始された患者については除外とした。年齢(中央値)は57歳、女性比率は79%、推定罹病期間(中央値)は3カ月であり、Steinbrockerステージ分類はIが51例、IIが9例と、対象症例の大部分がステージIまたはIIであった。

 MTX治療開始後の血漿サンプル採取時期はMTX開始から5〜18カ月後(中央値11カ月)であり、採取時点におけるMTX使用量(中央値)は8mg/週だった。なお、62例中20例(32.3%)でMTX以外のDMARDが併用されていた。

 MTX開始後の腫脹関節数、圧痛関節数、患者全般評価、医師全般評価、CRP、ESR、DAS28-ESR、HAQの各指標は、それぞれMTX開始前に比べ有意な改善を認めた(すべてP<0.001)。関節破壊の指標である総シャープスコア(mTSS)には有意な変化は認められなかった。

 また、血中IL-6はMTX開始前が4.72pg/mL、MTX開始後が1.04pg/mL(ともに中央値)であり、有意に低下した(P<0.001)。一方、血中TNFαは治療前が0.87 pg/mL、治療後が0.83pg/mL(ともに中央値)であり、有意な変化はみられなかった。

 MTX治療によるアウトカムとMTX開始前後のサイトカインの関連をみると、MTX開始後の疾患活動性は治療前の血中TNFαと有意に相関していた(R2=0.12、P<0.01)。また、関節破壊の進行(mTSSの年次変化量)は、MTX開始前の血中TNFα値、およびMTX開始後の血中IL-6と有意に相関していた(それぞれR2=0.20、P<0.01、R2=0.25、P<0.001)。

 また、1年当たり3ポイントを超えるmTSSの進行が認められた患者群(rapid radiographic progression[RRP]群、17例)と3ポイント以下の進行にとどまった患者群(対照群、45例)のMTX開始後の血中IL-6を比較すると、RRP群の血中IL-6は中央値8.99pg/mL(IQR:2.9-15.5)、対照群は中央値0.77pg/mL(IQR:0.54-1.5)と、RRP群でMTX開始後のIL-6が有意に高かった(P<0.001)。

 以上の結果から仁科氏は、初発無治療RA患者にMTX治療を開始した場合、(1)血中IL-6は低下するがTNFαは低下しないこと、(2)治療前の血中TNFαが高い患者はMTX開始後も疾患活動性が下がりにくく、関節破壊も進行しやすいこと、(3)MTX開始後に血中IL-6が下がらない患者は関節破壊が進行しやすいこと、の3点が示唆されたとし、「診断時に血中TNFαが高い症例は、早期の生物学的製剤導入を検討してもよいのではないか」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)