湯河原厚生年金病院の仲村一郎氏

 関節リウマチRA)では、様々な要因によって骨粗鬆症リスクが高まることが知られている。インフリキシマブ(IFX)はRAの疾患活動性を改善し、関節破壊の進行を抑制するだけでなく、これらの効果とは独立した骨密度増加作用を有する可能性が示された。4月26日から28日に東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)で、湯河原厚生年金病院仲村一郎氏らが報告した。

 生物学的製剤の標的サイトカインであるTNFαやIL-6は、骨代謝への関与が推測されている。なかでもTNFαは、破骨細胞の分化促進を介して骨吸収を促進することから、TNF阻害療法がRA患者の骨代謝に好ましい影響を及ぼす可能性がある。

 仲村氏らは、抗TNFα抗体であるIFXの投与を受けたRA患者43人の骨代謝マーカーの変化を1年間にわたって追跡した。その結果、骨吸収マーカーである尿中NTx値はIFX投与に伴って有意に低下し(P<0.01)、骨形成マーカーである血清オステオカルシン値は、逆に有意に上昇していた(P<0.05)。

 さらに、IFXを投与したRA患者40人と投与していないRA患者47人の1年間の骨密度変化を比較したところ、IFXを投与した患者の骨密度は1年間で不変ないし微増だったのに対し、IFXを投与していない患者では約4%の有意な骨密度低下があり(P<0.01)、投与していない患者との間に有意差が認められた(P<0.01)。

 しかし、RA患者の骨量低下には、ステロイドの影響や身体活動の低下、閉経に伴う女性ホルモンの低下、加齢など、様々な要因が関与している。また、生物学的製剤による身体機能の改善やステロイド投与量の減少で、二次的に骨量が増加する可能性もある。そのため、IFX投与患者における骨量の増加を骨代謝に対するIFXの直接的な作用によるものと断定することはできない。

 そこで仲村氏らは、RA患者344人の1年間の骨密度変化を測定した上で、HAQや運動頻度、ステロイド投与量、閉経の有無などを含む20項目の因子と骨密度減少率との関連を調べる単変量解析を行い、有意な関連が認められた因子を独立変数とした多変量解析を実施して、交絡因子の影響を排した上でIFXの骨量増加作用を検証した。

 その結果、単変量解析では、HAQスコア、運動頻度、就労の有無、1カ月以上の入院の有無、腰椎圧迫骨折の有無、ステロイド投与量、IFX投与の有無の7因子に、骨密度減少率と有意な関連が認められた。これらについて多重ロジスティックモデルによる多変量解析を行ったところ、HAQスコア、腰椎圧迫骨折の有無、IFX投与の有無の3因子が骨密度変化に対する独立な因子として抽出された。

 以上の結果から、IFX投与はRA患者の骨吸収を抑制し、骨形成を促進して骨量減少を抑制する有効な手段である可能性が示唆された。

 なお、TNF受容体製剤であるエタネルセプト(ETN)投与患者についても同様の検討を行ったが、ETN投与の有無と骨密度減少率との間には有意な関連を認めなかった。この点について仲村氏は、推測に留まると断った上で、「抗TNFα抗体であるIFXとTNF受容体製剤であるETNのTNF結合能の差や、導入時に0、2、6週と比較的短い間隔で集中的に投与されるIFXの用法上の特徴が関連しているのではないか」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)