北海道大学の渥美達也氏

 Treat to TargetT2T)の考え方に基づく治療プロトコールや画像診断に基づく早期治療開始、メトトレキサートMTX)の高用量投与など、関節リウマチRA)の新たな治療手段の有効性がわが国でも確認されつつある。北海道大学の渥美達也氏らは、4月26日から28日に東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)で、「抗TNF療法の新展開」と題し、RA治療の具体的な取り組みと成果を紹介した。

 T2Tを実践するには、効果に優れるだけでなく、疾患活動性や治療反応性に応じて調節できる治療手段が有益となる。渥美氏らの施設では、抗TNF薬の中でも、増量や投与間隔の短縮が可能なインフリキシマブ(IFX)を用いた独自の治療プロトコールを作成しT2Tを実践している。

 このIFXによるT2Tプロトコールは、BeSt試験の手法を応用したものだ。具体的には、通常の3mg/kg/8週から治療を開始し、8週ごとにDAS28の評価を行う。低疾患活動性(DAS28<3.2)に至るまで、必要に応じて投与量を6mg/kg、7.5mg/kg、10mg/kgと調整し、それでも低疾患活動性に至らない場合、6mg/kgを4週間隔で投与する。逆に、寛解を6カ月以上維持した場合は順次投与量を減量し、寛解維持を目指す。

 IFXによるT2Tプロトコール導入前(2007〜2008年)にIFXが開始されたSteinbrockerステージ分類1〜3のRA患者22人(対照群)では、IFXの1年継続率は約70%、1年後の低疾患活動性達成率は4割弱だった。

 一方、IFXによるT2Tプロトコール導入以降(2009〜2010年)に同施設でIFXを開始したステージ1〜3のRA患者は19人だった(T2T群)。19例中1例が無効中止となったが、18例は1年間治療を継続でき、1年後には実に85%の患者が低疾患活動性を達成していた。

 T2T群と対照群の患者背景に有意差はなく、両群のアウトカムの差は治療法の違いに基づくものと思われた。渥美氏は、「増量によって効果が高まるのは当然だが、プロトコールを示しておくことで、患者さんが治療の進め方を理解しやすくなる。その結果、不安を感じにくくなることが継続率向上に寄与しているのではないか」と語った。

 渥美氏はさらに、T2Tと並ぶ最近のRA治療のキーワードである「早期介入」にも言及した。早期から治療開始することにより寛解導入率が高まり、関節破壊の抑制効果も高まることは、多くのエビデンスからも明らかだ。最近発表されたCOMET試験のサブ解析では、発症から4カ月以内という非常に早期から抗TNF薬+MTXを開始した群においては、発症4カ月以降に抗TNF薬+MTXを開始した群と比べ、有意に高い寛解導入率が得られることが示されている。

 しかし、必ずしもすべてのRA患者が最初から強力な治療を必要としているわけではない。問題は、このような患者をどのようにして早期に同定するかである。この点に関連する試みとして、渥美氏らの施設では、すべての初診RA患者に対して1.5TのMRIによる全身の関節画像検査を行い、ハイリスクRA患者の早期同定に努めているという。

 MRIでは滑膜炎や骨髄浮腫の存在が明瞭に描出される。骨髄浮腫は必ずしもRAに特異的な所見ではないものの、骨髄浮腫が認められるRA患者の関節予後は非常に不良であり、関節破壊が進みやすいことが知られている。渥美氏は、「骨髄浮腫の所見は、抗TNF薬による早期介入の必要性を判断する上で有用」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)