杏林大学第一内科の有村義宏氏

 抗好中球細胞質抗体ANCA)関連血管炎において、腎炎を伴わない症例はリウマチ医が早期発見の鍵を握っている――。杏林大学第一内科の有村義宏氏は、ANCA関連血管炎の現状と展望について講演し、自験例による解析結果を紹介する中で、リウマチ医が重要な役割を担っている点を強調した。4月26日から28日まで東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)のシンポジウム「膠原病の難治性病態とアンメットニーズ」で報告した。

 有村氏はまず、血管炎の研究および診療が抱える課題は、(1)多臓器障害性の難治性疾患である、(2)地域差および人種差がある、(3)病因・病態が不明である、(4)欧米や日本で診断基準あるいは試薬が異なっている――の4点に集約できると指摘した。その上で、基礎分野や臨床分野の専門家、膠原病内科や腎臓内科、リウマチ科や整形外科、さらには循環器内科といった診療科の壁を越えた専門家らが手を携えて、こうした難問解決に挑んでいる点を強調した。

 たとえば、2012年3月末には国際会議であるAPVAS2012が東京・品川で開催されたが、世界21カ国から469人の専門家らが集い、集中的な討議を行ったという。

 一方、国内においては、2011年に、厚生省進行性腎障害調査研究班(松尾清一班長・名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科学)が「急速進行性腎炎の診断指針第2版」をまとめている。また、厚生省難治性血管炎調査研究班(槇野博史班長・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腎・免疫・内分泌代謝内科学)は、ANCA関連血管炎の寛解導入治療の現状とその有効性と安全性に関する観察研究(RemIT-JAV)」に取り組んでおり、2011年3月に登録を終了し、現在解析中だ。

 ANCA関連血管炎のわが国における治療法の確立のための多施設共同前向き臨床研究班(尾崎承一班長・聖マリアンナ医科大学)も精力的な研究を展開し、2011年2月28日には、難治性血管炎に関する調査研究班、進行性腎障害に関する調査研究班の3班合同で、「ANCA関連血管炎の診療ガイドライン」を発行している。

 有村氏は、所属する杏林大学第一内科(腎臓・リウマチ膠原病内科)が腎臓病、膠原病、さらに透析の診療を1診療科で担っている強みがあると指摘。同科で1983年から2010年までに初回寛解導入を施行した143例の解析結果を紹介した。

 この143例を対象に、MPO-ANCA(ミエロペルオキシダーゼ-抗好中球細胞質抗体)関連血管炎の腎症、非腎症、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)の割合を見たところ、腎炎は83%に確認された。このうちRPGNは66%、非RPGNは34%だった。また、腎炎がない症例は17%もあり、この点について有村氏は、「腎臓内科医による診療機会が少なく、リウマチ医による診療が多い」とし、リウマチ医は早期発見の鍵を握っている」と強調した。

 なお、MPO-ANCA関連血管炎の予後は改善しており、2003年以後、1年生存率は91%、透析導入率は19%となっているとした。

 有村氏は最後に、ANCA関連血管炎・RPGNの寛解導入治療の現状とその有効性と安全性に関する観察研究(RemIT-JAV‐RPGN)が発足し、2013年12月末日の最終症例登録へ向け、ANCA関連血管炎の全例登録がスタートしたことに言及。4月23日現在で114例が登録済みであることも紹介した。目標登録症例数が250例であり、順調な滑り出しだという。また、海外においても、原発性全身性血管炎の分類・診断基準作成のためのEULAR/ACR研究(多施設国際共同研究、DCVAS)が進行中であり、日本からも専門家らが参加し世界統一の診断基準作成に動き出している点を強調、こうした研究の成果への期待を示して講演を締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)

■訂正
 5月10日に以下の訂正を行いました。
・演者のお名前が間違っておりました。正しくは「有村義宏氏」です。お詫びして訂正いたします。