東京医科歯科大学の針谷正祥氏

 RA治療中に悪性腫瘍を発現した症例の多くで、生物学的製剤MTXが中止されていたが、副腎皮質ステロイドは継続されていた。また、悪性腫瘍の治療が終了した後には、多くの症例においてDMARDsと副腎皮質ステロイドによる治療が行われていたことも分かった。東京医科歯科大学の針谷正祥氏らが、自院の症例をもとに解析したもので、4月28日まで東京で開催された第56回日本リウマチ学会(JCR2012)のシンポジウム「合併症を伴うRA治療の実際」で報告した。

 悪性腫瘍の既往があるRA患者に対して治療の選択肢を示したガイドラインや指針は存在するものの、実臨床では、目の前の患者に、ガイドラインなどが推奨する治療を適用できないこともしばしばなのだという。針谷氏らは、こうした認識のもと、実際のリウマチ専門医が悪性腫瘍を合併したRA患者をどのように管理しているのかを明らかにするため調査を行った。

 対象は、東京医科歯科大学において、SECURE研究やREAL研究に登録されている症例および東京医科歯科大学に外来通院している患者のうち悪性腫瘍を発現した症例。2007年1月から2011年12月に、悪性腫瘍を診断された症例から、詳細なデータが確認できる26症例を抽出した。

 この26例について、症例報告書を用いて、悪性腫瘍診断日をベースラインとし、悪性腫瘍診断時の年齢やRA罹病期間、悪性腫瘍の病理診断名などの悪性腫瘍発現日および悪性腫瘍診断後のRA治療、癌の治療などについて、後ろ向きにデータを収集した。

 患者背景は、女性の割合が57.7%、悪性腫瘍診断時の平均年齢が71±9.5歳、RAの平均罹病期間(月)が126±82.0、合併症有りの症例が18例(69.2%)、肺合併症例数が7例(26.9%)、喫煙歴有りの症例が16例(61.5%)だった。

 悪性腫瘍と診断されたときに使用されていたRA治療薬は、生物学的製剤が10例(IFX1例、ETN4例、ADA2例、TCZ3例)だった。生物学的製剤使用開始から悪性腫瘍発現までの平均期間(月)は24.3±23.7で、非生物学的DMARD使用例は18例(69.2%、うちMTX使用例が12例、46.2%)だった。経口ステロイド使用症例は13例(50.0%)、NSAID使用症例は10例(38.5%)だった。

 生物学的製剤使用症例の10例のうち、DMARD併用は7例(MTX5例、非MTX2例)、DMARD非併用は3例だった。また、生物学的製剤非使用症例の16例のうち、DMARD使用は11例(MTX7例、非MTX4例)、DMARD非併用は5例だった。

 悪性腫瘍の種類としては、固形癌が20例(前立腺癌、胃癌、肺癌、大腸癌など)、悪性リンパ腫が5例、白血病が1例で、特に目立ったものはなかった。

 悪性腫瘍診断時および診断後の治療内容を調べたところ、悪性腫瘍診断時に生物学的製剤を使用していた10例において、診断後に生物学的製剤を中止した症例は7例だった。また、悪性腫瘍の治療が一段落した後に生物学的製剤を再開した症例は2例にとどまり、中止のままが5例だった。

 一方、悪性腫瘍診断時にMTXを使用していた12例においては、悪性腫瘍診断後に中止または変更した症例は9例だった。また、悪性腫瘍治療後にMTXを再開していたのは5例と半数以下だった。

 MTX以外のDMARDは悪性腫瘍診断時に8例で使用していたが、診断後は6例で中止していた。悪性腫瘍治療後には1例で再開、2例で他の薬剤に変更、3例で中止のままだった。

 ただしステロイドについては、13例で使用していたが、悪性腫瘍診断後は11例で継続しており、他の薬剤に比べて継続率が高かった。

 悪性腫瘍診断後にRA治療を弱めていた17症例(生物学的製剤使用8例、非使用9例)についてみると、生物学的製剤やMTX、TACなどの免疫抑制作用のある抗リウマチ剤を再開した症例は11例(生物学的製剤使用5例、非使用6例)だった。これらの症例について針谷氏は、「悪性腫瘍の治療が一定のめどが立った段階で、RA治療を積極的に行う必要があったと考えられる」と考察した。一方の治療強度が変わらなかった9例については、悪性腫瘍の診断前からRA活動性が安定していたためもともと積極的なRA治療を受けていなかったり、あるいは患者や家族の希望でRA治療を優先させていた例だったという。

 26例について2011年12月時点での生命予後をまとめたところ、生存が85.5%、死亡が11.6%、追跡不能(転移・再発が認められなかった症例で転医により調査時点で追跡)が2.9%だった。転移・再発なしは16例で、転移・再発ありは9例だった。なお、死因については、悪性腫瘍が4例(転移・再発なし1例、転移・再発あり3例)、肺炎・胸膜炎が1例(転移・再発あり1例)だった。

 針谷氏は今回の解析について、「RA治療中に悪性腫瘍を発現した症例の多くで、生物学的製剤やMTXは中止されており、副腎皮質ステロイドは継続されていた。悪性腫瘍の治療が終了後には、多くの症例においてDMARDsと副腎皮質ステロイドによる治療が行われていた」とまとめた。また、悪性腫瘍を発現した26例のうち悪性腫瘍の転移・再発が認められた症例は9例であった点については、文献上の解析を加えた上で、「悪性腫瘍の再発と使用薬剤の関連性を支持する明確なエビデンスは、現時点で得られていない」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)