学会賞の受賞者講演に臨む東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター長の山中寿氏

 2012年度の日本リウマチ学会学会賞は、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター長山中寿氏が受賞した。同センターが2000年から取り組んでいる、RA患者を対象とした前向き観察研究であるIORRAInstitute of Rheumatology、Rheumatoid Arthritis)の実績が評価されたもの。同氏は第56回日本リウマチ学会で行われた受賞者講演の中で、「我々に必要なのは独創的な研究である」との言葉をはじめ、数々の先輩諸氏の教えが研究の礎になっていると語った。

 同センターに入った当初、山中氏は鎌谷直之氏(現・理化学研究所ゲノム医科学研究センター長)のもとでプリン代謝や細胞生物学を学んだのだという。その鎌谷氏から教わったのが、「数を力にした研究よりも独自の切り口を考えること」、ならびに「我々に必要なのは独創的な研究である。他人の業績をいくら上手に解説できても意味がない」との教えだった。「独自の切り口」あるいは「独創的」とのキーワードが、その後の山中氏の研究を導く力となっていく。

 IORRAは2000年10月に、J-ARAMIS(Japanese Arthritis Rheumatism and Aging Medical Informaion System)としてスタート。山中氏は立ち上げからIORRA研究に携わってきた。同研究は、RA患者を対象とする前向き観察研究として、患者情報、医師評価、臨床検査値に基づくデータベースを構築し、様々なテーマのもとで専門的な統計解析を継続している。患者調査は年2回実施し、今年は第24回目となる調査を実施中だ。毎回、約5000人のRA患者の情報を集積しており、対象患者からの回収率は98%という高い水準を維持している。

 山中氏は、IORRA研究の特徴として、(1)同センターの歴史に立脚した臨床研究、(2)前向き臨床研究、(3)統合データベース、(4)継続的に実施、(5)患者情報の重視、などを挙げた。また、毎回98%という高い回収率であるとし、「選択バイアスがほぼゼロ」を実現していると強調した。

 「データは情報ではない。情報の原石にすぎない。原石にすぎないデータが情報となるには、目的のために体系化され、仕事に向けられ、意思決定に使われなければならない」(ピーター・ドラッガー)。

 これは、山中氏がIORRA研究を続けるに当たって常に気にかけている言葉だ。IORRA研究においては、2003年に最初の論文が発表となり、2000〜2012年までの論文発表は英文のみで計68編を数えるまでになった。また、学会発表数は、2002年の十数題を皮切りに、2012年までに計234題と成果を出し続けている。今回の日本リウマチ学会の会長を務める東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学教授の宮坂信之氏は、IORRA研究が国内にとどまらず世界に向けて、その成果を発信し続けている功績を称え、学会賞の受賞理由に掲げていた。

学会賞および奨励賞の授与式の模様

 山中氏はIORRA研究で心がけていることとして、(1)IORRAでしかできない研究を企画する、(2)臨床現場に還元できる研究を行う、(3)可能な限り完全なデータを収集する、(4)統計学的に正しい解析を行う、(5)数を力にした仕事ではなく独自の切り口を考えるを挙げた。また、患者に対する敬意を忘れないことと情報(解析データ)を患者にフィードバックすることも重視しいていると語った。患者、医療者そして社会の「三方よし(Win-Win-Win)の実現が目標」とも。最後には、月並みだがと断りながら、「継続は力なり」を挙げた。

 「RA臨床研究で解決すべき課題は多い」と強調した山中氏は、IORRA研究の今後の展開に期待を示しつつ、先輩諸氏、共同研究者、ならびに同センターの医師や職員らに感謝の意を表し講演を締めくくった。

 なお、同時に発表された奨励賞は、長崎大学病院第一内科助教の一瀬邦弘氏、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターリウマチ内科助教の五野貴久氏、広島大学病院整形外科助教の中佐智幸氏の3氏が受賞した。

(日経メディカル別冊編集)