千葉県こども病院アレルギー・膠原病科の冨板美奈子氏

 小児シェーグレン症候群の新たな診断基準の検討が進んでいる。既存の基準における課題の抽出を終え、さらに基準案のたたき台となる私案がまとまるなど、2013年の成案作成に向けて精力的に議論が重ねられている。日本小児リウマチ学会日本シェーグレン症候群学会の合同ワーキンググループが策定を進めているもので、千葉県こども病院アレルギー・膠原病科冨板美奈子氏がその進捗状況について、4月26日から東京で開催中の第56回日本リウマチ学会(JCR2012)で報告した。

 鹿児島県での検討では、小児シェーグレン症候群の有病率は10万人当たり2.53人で、若年性特発性関節炎の6.8〜11.6、全身性エリテマトーデスの4.70に次いで多くなっている(武井修治:日本臨床免疫会誌、2010;33;8-14)。しかし、全国規模でみた場合の有病率は、リウマチ専門医の有無に依存した地域差があるなど、診断されていない症例が多いのではないかと予測されている。

 こうした問題点を挙げた上で、冨板氏は、小児シェーグレン症候群の診療の現状について、「長期経過ののち腺外臓器障害を発現して受診する患者が少なからず存在する」「診断がされていない症例がある」「予後予測因子が不明である」「治療法が確立していない」など、課題が山積していると指摘した。このため、「疑い例を含めた患者を広く、それも早期に把握する基準が求められている」(冨板氏)との認識を示し、新たな基準の方向性を説明した。

 新基準の策定に向けてワーキンググループでは、メンバーの小児科委員が所属する8施設と関連施設が参加し、小児シェーグレン症候群の症例を登録、その特徴と課題を明らかにしている。対象は1995年以降に受診し、(1)唾液腺の障害、(2)涙腺の障害、(3)自己抗体(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗核抗体、リウマチ因子)陽性あるいはIgG高値――のいずれかを認め、主治医が一次性小児シェーグレン症候群と診断した発症年齢が16歳未満の88例だった。

 これらの症例をもとに、現在ある診断・分類基準における診断率を検討したところ、厚生省基準(1999年)では80.6%、ヨーロッパ・アメリカ基準(2002年)では40.9%、SICCAの基準(2011年)では63.6%という成績だった。厚生省基準が最も高かったが、一方でいずれの基準でも診断されなかった症例が15例もあり、「疑い例を含めた患者を広く拾い上げる」という目的には程遠いものだった。

 冨板氏はまた、新基準へ向けたたたき台として「小児期シェーグレンの診断の手引き」(私案)を提示し、ワーキンググループで議論を重ねていることも紹介した。

 私案では、感染などの他の疾患を除外した上で、まず「不明熱、慢性の皮疹、関節痛、倦怠感など」、または「反復性耳下腺腫脹などの腺症状」または「膠原病の合併が知られている臓器障害」などを確認することが示されている。これらが確認された場合は、次に「IgG高値、抗核抗体、リウマチ因子、抗SS-A/Ro抗体、抗SS-B/La抗体」を検討する。これらの指標が陽性であった場合は、MRシアログラフィー(唾液腺シンチグラフィ)を行い、さらに口唇小唾液腺生検へと進むという流れとなっている。臨床の現場において使いやすく実践的でかつ、「疑い例も含め早期に把握する」という診断案になっている。

 ワーキンググループは今後、冨板私案をベースに、唾液腺障害の評価方法、眼科所見の評価方法、血液検査所見の評価、参考とすべき臨床症状などについて、議論を深めていくことになる。

(日経メディカル別冊編集)