東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターの佐藤恵里氏

 インフリキシマブ(IFX)は関節リウマチ(RA)に対して日本で最初に承認された生物学的製剤であり、他の生物学的製剤よりも長期に実地臨床で使用されているわけだが、他の生物学的製剤に比べた際の継続率がしばしば指摘される。しかし、適切な症例選択や投与量・投与間隔の調節、メトトレキサート(MTX)など併用薬の最適化、リスクマネジメントの徹底などにより、IFX継続率は著しく向上し、80%を超える1年継続率が認められたという。東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター佐藤恵里氏らは、7月20日まで神戸で開催された日本リウマチ学会(JCR2011)において、2000年から続くRA患者観察研究・IORRAの解析から、IFX継続率の経時的な変遷について報告した。

 IORRAは、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターが2000年10月から行っている前向き観察研究で、11年間の患者情報、医師評価、臨床検査値などのデータベースが構築されており、毎年2回、約5000人の情報の解析が行われている。

 IFXは、RA治療における日本初の生物学的製剤として2003年に使用が可能となった。だが、IORRAのデータから算出された同剤の2009年までの継続率は、開始から6年後の時点で28%というものだった。

 しかし、このデータを発売後間もない2003〜2004年にIFXが開始された患者群(n=88)と、2005〜2009年に同剤が開始された患者群(n=176)に分けて解析したところ、前者では1年継続率が65%、2年継続率が57%、4年継続率が34%だったのに対し、後者ではそれぞれ75%、63%、60%といずれの時点でも継続率が高くなる傾向がみられた。

 さらに、2008〜2009年にIFXを導入した患者(n=52)に限ると1年継続率は84%にまで向上しており、IFX発売直後から5年の間に1年継続率は20%近く上昇していたことになる。

 継続率の向上をもたらした要因としては、罹病早期から生物学的製剤を積極的に用いる治療戦略の有用性が明らかになり、関節症状や臓器障害などを含む全身状態が悪くなる前に投与開始する症例が増えてきたことが考えられる。さらには、リスク・ベネフィットの観点から、高齢者や合併症を有するようなハイリスク患者には慎重投与とするなど、症例選択が変化したこと、ハイリスク患者への事前対応策が研究され普及したこと、十分量のMTX併用や最小限のステロイド投与など併用薬の投与法の工夫が進んだことなどもその要因となっている。

 また、IFXは2009年7月に増量、投与間隔短縮が承認されており、このことが継続率に影響した可能性もある。そこで佐藤氏らは、2010年8月時点でIFXが投与されていた229人の患者をIFXの投与量に応じて、(1)4mg/kg超への増量群(n=77)、(2)3〜4mg/kgへの増量群(n=48)、(3)3mg/kg継続群(n=104)に分け、それぞれの継続率を比例ハザードモデルにより検討した。

 その結果、3〜4mg/kgへの増量群、3mg/kg継続群に対する4mg/kg超への増量群のハザード比は、それぞれ2.33(95%信頼区間:1.1-5.1)、4.16(95%信頼区間:2.2-8.2)であり、4mg/kg超への増量群は他の2群に比して継続率が有意に良好であった。

 以上のように、IFXの継続率は年々向上しており、その要因にはいくつかの因子が考えられるが、特にIFXを増量した例で継続率の著明な向上が得られていることが示唆された。佐藤氏は、「増量はIFXの継続率を維持させる重要な因子の1つだ」と結論した。今後の増量投与のさらなる普及により、さらに継続率の改善が進むことを期待させる結果と言える。

(日経メディカル別冊編集)