国立病院機構熊本再春荘病院リウマチ科部長の森俊輔氏

 関節リウマチ(RA)患者でもニューモシスチス肺炎に対する注意が必要で、無症候キャリアからの感染により外来RA患者の間で集団発生する可能性があることも念頭に置きたい――。7月20日まで神戸で開催されていた日本リウマチ学会(JCR2011)で国立病院機構熊本再春荘病院リウマチ科部長の森俊輔氏は、自院での集団発生の経験を基に、こう指摘した。

 ニューモシスチス肺炎(PCP、以前はカリニ肺炎と呼ばれた)は、P jiroveciiの感染により発症する。もともと、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者や免疫抑制薬を大量に使用し免疫不全状態となっている患者における日和見感染症として認識されていた。だが近年、生物学的製剤の登場でより積極的なRA治療が普及、RA患者における感染症としても無視できなくなってきた。

 2005年3月から同科では、外来のRA患者に対し、誘発喀痰からのP jirovecii DNAに対するPCR検査を勧めている。検査推奨を始めてから2年間は、1人にPCPが発症したのみで無症候キャリアはいなかった。

 だが2006年11月から2008年10月までに9人のキャリアを同定し、うち3人が検査後1カ月以内に発症した。同じ期間、PCR検査を受けていなかった5人の外来RA患者からも、PCPが発症した。

 ST合剤の投与で発症者・キャリアともにP jiroveciiの排除に成功、その後PCP患者の新たな発生はなくなったが、このときの発症パターンから、RA患者の無症候性キャリアを介したヒト・ヒト感染による集団発生が疑われた。その理由は、同病院でのPCP発症頻度が他施設に比べて高かったことに加え、PCP発症者の同胞や夫婦が発症した例があったためだ。発症者やキャリア間で4カ月以内の外来日が同一だったという例も多かった。

 一方、医療スタッフがP jiroveciiのリザーバーとなっているという報告もあるため職員の検査も行ったが、医師や看護師の誘発喀痰からはP jiroveciiのDNAは検出されなかった。またリウマチ科の待合と呼吸器科の待合が近接していることから呼吸器科外来患者からの感染も疑われたが、同じ時期に呼吸器科ではPCPの発症はなかった。

 この集団発生事例の経験から森氏は、「高齢のRA患者がリザーバーとなっている可能性があり、いったん発生すると集団発生となるリスクがあり注意が必要だ。ただ安易な予防投薬は耐性菌を作る危険性があることから、PCR検査の励行でキャリアを見つけ、キャリアに限定した抗菌薬(ST合剤)の短期投与で対応することがPCP発症予防に有効と考えられる」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)