埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科の長澤逸人氏

 すでに関節破壊が進行した関節リウマチ(RA)患者では、その後の関節破壊の進行を抑えることができても身体機能の改善を得ることは難しいとされる。だが、約2年間のインフリキシマブ(IFX)治療により、ベースラインで10%程度だった機能的寛解達成患者が40%に達するという治療成果が示された。機能的寛解に至った患者のHAQ-DI指標とベースラインの骨・関節破壊の関連を見たところ、骨びらんではなく、関節裂隙の狭小化が有意に相関していることが分かった。7月17日から20日まで神戸で開催された日本リウマチ学会(JCR2011)において、埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科長澤逸人氏らが報告した。

 関節破壊の指標であるvan der Heijde Sharp score (vdH-Sharp score)は、骨びらんスコアと関節裂隙狭小化(JSN)スコアという2つの要素からなる。関節破壊がRA患者の身体機能の低下をもたらすことは明らかだが、骨びらんとJNSがそれぞれ身体機能に及ぼす影響の違いについては十分には検討されていない。

 長澤氏らは、IFX治療を受けたRA患者の治療前および治療2年後のHAQ機能障害指数(HAQ-DI)とvdH-Sharp score(総スコア、骨びらんスコア、JSNスコア)を評価し、両者の関連を検討した。

 対象は、2003年9月〜2006年3月にIFX治療を開始し、X線を含む2年間の観察データのあるRA患者130人。平均年齢は52.8歳、男性患者は15人、罹病期間は3〜370カ月(平均94.4カ月)だった。

 治療前のvdH-Sharp scoreの年間進行度は、総スコアが9.9、骨びらんスコアが4.7、JSNスコアが6.8であり(いずれも平均値)、関節破壊の進行の速さがうかがわれた。また、身体機能にほとんど支障がない「機能的寛解」(HAQ-DIスコア≦0.5)患者の割合は10%程度にすぎず、9割近くの患者が何らかの身体機能障害を抱えていた。

 これらの患者に対する2年間のIFX治療の結果、vdH-Sharp scoreの年間進行度は、総スコアが2.0、骨びらんスコアとJSNスコアがともに1.0と、いずれも有意に低下した(すべてp<0.0001)。

 これに伴い、機能的寛解となる患者は徐々に増加し、その割合は102週時点で40%程度となり、3割もの患者が新たに機能的寛解に達したことが示された。しかし、IFXによって関節破壊の進行が著明に抑制されたにもかかわらず、依然として約6割の患者が機能障害を呈していた。

 そこで長澤氏らは、機能的寛解の成否に関与する因子を探るために、102週時点に機能的寛解となった患者群と、機能的寛解を得られなかった患者群の背景因子を比較した。その結果、前者では後者に比してIFX導入時のvdH-Sharp scoreの総スコアが有意に低く(70.4 対 150.2、p<0.0001)、治療開始前の関節破壊の程度がその後の機能障害に影響していることが示唆された。

 続いて同氏らは、IFX導入時の骨びらんスコア、JSNスコアのそれぞれについて、患者を低値群(<10ポイント)、中間群(10〜40)、高値群(≧41)の3群に分け、各群の102週時点のHAQ-DIスコアを比較した。

 その結果、骨びらんスコア、JSNスコアとも、高値群における102週時点のHAQ-DIスコアは他の2群に比して有意に高かった(ともにp<0.0001)。治療開始前の骨びらんとJSNは、いずれも将来の機能障害に影響することが示唆された。

 しかし、機能的寛解を得た患者(n=40)のみを抽出して、IFX導入時のvdH-Sharp scoreと102週時点のHAQ-DIスコアの相関をみたところ、総スコア、JSNスコアと102週時点のHAQ-DIスコアの間には有意な相関が認められた(総スコア;r=0.373、p=0.018、JSNスコア;r=0.364、p=0.021)が、骨びらんスコアと102週時点のHAQ-DIスコアの間には有意な相関は認められなかった(r=0.251、p=0.119)。

 また、機能的寛解を得た患者をIFX導入時のJSNスコア中央値で二分位すると、高値群(8〜66ポイント)では低値群(≦5ポイント)に比して102週時点のHAQ-DIスコアが有意に高かった(p=0.024)が、骨びらんスコアの高値群(3〜12ポイント)と低値群(≦2ポイント)の間で同様の比較を行った場合、両群間に有意差は認められなかった(p=0.051)。

 以上の結果より、IFX導入前の骨びらんとJSNの程度は、いずれも将来の機能障害に影響するが、機能的寛解例では治療前のJSNスコア、すなわち関節裂隙狭小化の程度がより大きく関与していることが示唆された。

(日経メディカル別冊編集)