東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターの杉本直樹氏

 関節リウマチ(RA)患者に対し、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に心血管イベント予防ための低用量アスピリンを併用すると、上部消化性潰瘍発症のリスクは上昇することが明らかになった。東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターによるRA患者コホート研究IORRAの検討結果で、7月17日から20日まで神戸で開催されていた日本リウマチ学会(JCR2011)で、同センターの杉本直樹氏が発表した。

 同じIORRAコホートの検討から日本人でも、全体に比べRA患者で虚血性心疾患の罹患率が高いことが判明した(今学会で報告)。さらに日本人は脳血管疾患による死亡率も高いことから、心血管イベントの一次予防・二次予防としてわが国でも、低用量アスピリンが推奨されている。だが低用量アスピリンだけでも消化管障害のリスクは高くなる上、RA患者ではNSAIDsとの併用になることが多いため、併用によるリスク上昇が懸念されていた。

 IORRAは、東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターが取り組んでいるRA患者のコホート研究で、2000年10月に開始された。年2回、患者の自己申告情報に医師の評価と臨床検査値を加えた横断的調査を行っており、現在までに調査回数は22回に及ぶ。患者からの調査用紙の回収率は98%以上で、毎回約5000人のデータが集積される。

 今回杉本氏は、2007年4月から2010年3月の間に一度でもIORRAに登録されたRA患者を対象とし、日本人RA患者における低用量アスピリンとNSAIDsの併用状況、および上部消化性潰瘍発症との関連について検討した。上部消化性潰瘍の発症は、診療記録で確認できたものをイベントとして採用した。

 低用量アスピリン、NSAIDsどちらも服用していなかった患者は2345人(A群)、NSAIDsのみ服用していた患者が4584人(B群)、低用量アスピリンとNSAIDsを併用していた患者が74人(C群)だった。各群の上部消化性潰瘍発症者数(A群35例、B群110例、C群3例)から、10万人年当たりの発症率を見ると、A群が590.8、B群が923.4、C群が1620.2となった。

 Cox回帰分析によりA群を1とした場合のハザード比を求めたところ、B群で1.51(95%信頼区間:0.97-2.35、p=0.068)、C群で2.22(同:0.67-7.41、p=0.195)で、有意ではなかったがB群およびC群で上部消化性潰瘍のリスク上昇が観察された。

 またB群およびC群で服用しているNSAIDsの種類を調べたところ、上部消化性潰瘍が確認された患者では、非選択的COX阻害薬を服用している患者が多かった。

 ただし今回の検討では、上部消化性潰瘍の発症は患者の自己申告と診療記録に基づいたもので、発症数が過小評価されている可能性があるという。またC群で有意差が得られなかった理由は、C群の発症者数が少なかったためと考えられた。

 これらを踏まえ杉本氏は、「日本人RA患者でも、低用量アスピリンとNSAIDsの併用で上部消化性潰瘍のリスクが高まる可能性が示唆された。このようなハイリスク患者では、NSAIDsの種類選択について一考する必要がある」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)