順天堂大学膠原病内科の多田久里守氏

 インフリキシマブ(IFX)は、強直性脊椎炎(AS)に対し5mg/kg・6〜8週間隔の投与が認められている。関節リウマチ(RA)と同様、3mg/kg・8週間隔の投与でも効果が得られる症例もあるが、一方で効果を維持できない症例も散見される。こうした効果減弱例に対し、IFX5mg/kgの投与や投与間隔の短縮を試みた新たな研究で、疾患活動性が安定に向かう傾向が認められた。順天堂大学膠原病内科多田久里守氏らが、7月17日から20日まで神戸で開催された日本リウマチ学会(JCR2011)で発表した。

 多田氏らの施設では以前から、高疾患活動性で日常生活動作に支障を来した6人のAS患者(男性5人、女性1人)に対し、RAにおける標準用量であるIFX3mg/kgの8週間隔投与による治療を行ってきた。治療開始時の平均年齢は32.8歳、5人がHLA-B27陽性で、平均CRP値は2.7±2.1mg/dLだった。

 これらの患者の疾患活動性は、IFX導入によって当初は著明に低下したが、このうち3人の患者は治療期間が長くなるにつれて効果の減弱がみられた。同氏らは、この3人の患者に対してIFX5mg/kgの投与、または投与間隔の短縮を行い、その後の疾患活動性の推移を追跡した。

 なお、疾患活動性の評価には、従来のBASDAI(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index)より客観性に優れた新しい指標のASDAS(Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score)を用いた。

 罹病期間約16年の39歳の女性患者には、投与間隔を8週から変えずに、IFX5mg/kg投与を試みた。その結果、ASDASはいったん著明に低下したものの、1年ほど経過した頃から徐々に再上昇したため、投与間隔を6週に短縮するとともに、IFX投与に先立ちプレドニゾロン(PSL)20mgの前投与を開始した。これにより、ASDASは1.3前後まで低下し、以後約1年を経過した今も良好にコントロールできているという。

 また、罹病期間約17年の34歳の男性患者の場合も、IFX5mg/kg投与とPSL前投与に応答し、1年半以上にわたって良好なコントロールが得られている。こうしたことから、疾患活動性を抑制できない患者に対しては、IFXの投与間隔の短縮や投与前のPSL投与を試みる価値があると考えられた。

 しかし、発症から10年以上と推定される49歳の男性患者の場合、IFX5mg/kg投与を行っても改善は得られず、ASDASは依然として4前後のままだった。IFX5mg/kg投与や、投与間隔の6週への短縮だけでは効果減弱に対処できない患者も存在するが示唆された。

 RAの場合、抗IFX抗体(ATI)の産生がIFXの効果を減弱させる可能性が示唆されているが、併用が必須であるメトトレキサート(MTX)がATIの産生を抑えるとされている。ASではMTXの併用は不要とされており、また、ATI産生も起こりにくいと考えられている。そのため、多田氏らの施設でも、これまでAS患者にはMTXを使ってこなかったという。

 しかし、近年はASでもIFX投与例の約3割にATI産生がみられるという報告もある。多田氏らは、「今後はASにおけるATI産生と効果減弱の関連についても視野に入れ、より多くの症例でさらに検討を重ねていく」と語った。

(日経メディカル別冊編集)