名古屋大学大学院整形外科・リウマチ科の花林雅裕氏

 生物学的製剤の中止理由の多くは、効果不十分か有害事象のいずれかである。インフリキシマブ(IFX)導入時の疾患活動性とIFX継続率との関連を検討した研究で、IFX導入時の疾患活動性が高い患者では効果不十分による中止の割合が高くなるため、IFX増量を念頭に置いた、より積極的な治療介入を行うべきであることが示唆された。名古屋大学大学院整形外科・リウマチ科花林雅裕氏らが、7月17日から20日に神戸で開催された日本リウマチ学会(JCR2011)で報告した。

 本検討の対象は、多施設共同生物学的製剤治療研究グループのTBC(Tsurumai Biologics Communication)に登録されているRA患者1481人のうち、最初の生物学的製剤としてIFXを投与された患者496人。IFX導入時の平均年齢は57.46歳、罹病期間は10.91年、DAS28-CRPは4.96、患者によるVASスケール評価は61.4mmだった。

 花林氏らは、これらの患者をIFX導入時の疾患活動性により3分位に分け、疾患活動性が低い第1群(DAS28-CRP<4.55、n=114)、中間の第2群(DAS28-CRP;4.55‐5.45、n=112)、高い第3群(DAS28-CRP>5.45、n=114)とした。

 3群間で年齢、男女比、罹病期間、メトトレキサート(MTX)投与量などに有意な差は認められなかったが、プレドニゾロン(PSL)併用例の割合は疾患活動性が高い群ほど多かった(第1群から45.6%、62.5%、67.5%、p<0.01)。また、CRPやESR、MMP-3値も疾患活動性の高い群ほど高く(すべてp<0.01)、VASも同様だった。

 IFXの継続率は3群間に有意差がなく、有害事象による中止例の累積発生率も同等であった。しかし、効果不十分による中止の累積発生率は、疾患活動性が最も低い第1群では5年で30%未満であったのに対し、第2、第3群では6割近くに及び、第1群との間に有意差を認めた(それぞれp<0.05、p<0.01)。

 続いて花林氏らは、VASが中央値(62.0)より低い患者(低VAS群:n=165)と高い患者(高VAS群:n=166)の2群間でも同様の比較を行った。両群の年齢、男女比、罹病期間、MTX投与量、PSL投与量、PSL併用率、MMP-3値はすべて同等であったが、DAS28-CRPとCRP、ESR値は高VAS群の方が有意に高かった(すべてp<0.01)。

 低VAS群のIFX継続率は、高VAS群に比して有意に高かった(p<0.05)。また、有害事象による中止例の累積発生率は両群間で差がなかったが、効果不十分による中止例の累積発生率は、高VAS群より低VAS群の方が有意に少なかった(p<0.05)。

 以上のように、IFX導入時の疾患活動性が高い患者や患者の主観的評価が不良な患者では、有害事象のために中止に至る確率が高くなることはないが、効果不十分のために中止に至る確率が高くなる可能性が示された。疾患活動性の高い患者や自覚症状が強い患者では、IFXが効果不十分に至る可能性を念頭に置き、必要に応じて増量や投与間隔短縮などの対策を考慮すべきであることが示唆された。

 また、今回の検討では、疾患活動性が低い症例であっても、IFX導入から4〜5年目までは効果不十分による中止の段階的な発生がみられた。花林氏は、この点について言及し、「疾患活動性が低い場合でも治療介入や工夫を加えることによって継続率を高める余地があるのではないか」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)