東京医科大学八王子医療センター総合診療科の青木昭子氏

 抗リウマチ薬治療を新たに始める、もしくは別の薬に変更するという場面で、患者の6割は「医師と相談して決めたい」と考えていることが示された。しかし、実際に相談して決めたのは「相談して決めることが理想」と回答した患者の4割に過ぎず、患者の意向が薬の選択に必ずしも十分に反映されているとは言えない実態が浮かび上がった。東京医科大学八王子医療センター総合診療科の青木昭子氏らが、7月20日まで神戸で開催されていた日本リウマチ学会(JCR2011)で発表した。

 青木氏らはこれまでに、日本リウマチ友の会の会員を対象とした調査で、治療法の決定に対する患者の意向は、「自分で決めたい」から「医師に任せたい」までさまざまであることを報告している。また、患者の意向に沿った医療側の関わり方ができた場合、患者の満足度が向上することも明らかにした。今回は、リウマチ外来において抗リウマチ薬を決定する場面に着目し、患者の意向を調査した。

 対象は、横浜市内の3病院のリウマチ外来に、3カ月以上通院している成人のRA患者。2010年10月〜12月に、無記名自記入式質問紙による横断調査を実施した。質問紙の配付は、外来で医師が患者に、質問紙と回収用封筒(切手付き)を手渡し、原則として郵便で回収した。

 2011年2月までに、配付した406人のうち238人から回答を得た。回収率は58.6%だった。女性が191人(82.3%)、既婚が91.6%だった。年齢は65.1±10.1歳(37‐87歳、中央値66歳)だった。罹病期間は、平均13.2±10.7年(10カ月‐52年、中央値10年)と幅があった。主婦が61.7%で、フルタイムの仕事に就いていたのは8.9%だった。

 患者の意向については、自分にはこれだけのことができるという見通しを尋ねる「セルフ・エフィカシー調査法」で把握した。例えば、「抗リウマチ薬を新しく始める、または変更する場面で、あなたはあなたの医師とどのように関わりたいですか」 と質問し、まず「あなたの理想はどれですか」と尋ね、次に「実際に決めた時にどれに近かったですか」と聞く方法をとった。それぞれの回答は共通で、(1)医師があなたに一番良いと思う薬を選んで決める、(2)あなたと医師が相談して決める、(3)あなたが一番良いと思う薬を選んで医師に伝える、の3つの選択肢から選んでもらった。

 その結果、215人の有効回答のうち、(3)の患者自身が決めるは、「理想」と「実際」とも回答者はいなかった。(2)の医師と相談して決めるは、131人(全体の60%)が「理想」としたが、実際に医師と相談して決めたのは55人(理想と回答した人の42%、全体では25%)に留まっていた。(1)の医師に任せるは、84人(全体の39%)が理想とし、実際に医師に決めてもらったのは82人(理想と回答した人の98%、全体の38%)だった。

 理想と実際が一致しなかったのは78人で、そのうちの76人は相談して決めたいと「理想」で回答していたものの、実際は医師に決めてもらっていた。一方、理想と実際の回答が一致していたのは137人で、全体の64%となった。一致率は、これまでの日本リウマチ友の会の会員を対象とした調査結果の52%、あるいは欧米の乳癌患者を対象とした報告の42〜49%に比べて高率であった。

 演者らは、「治療法決定に対する患者の意向を、医師が直接尋ねても、本音の回答が得られない可能性がある」と指摘。セルフ・エフィカシー法を用いるなどの工夫することで、患者の意向を推測し、治療の質の向上につなげていくべきだろうと考察した。

(日経メディカル別冊編集)