大阪医科大学第1内科の小谷卓矢氏

 免疫抑制剤のシクロスポリンを投与されている膠原病患者では、一部のプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用により、血中シクロスポリン濃度の上昇や腎機能障害が増加する可能性が示唆された。大阪医科大学第1内科の小谷卓矢氏(写真)らが、7月17日から20日まで神戸で開催された日本リウマチ学会(JCR2011)で発表した。

 膠原病患者などでは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による消化性潰瘍の予防や治療を要することが多く、原疾患の炎症抑制などのために投与されるカルシニューリン系免疫抑制剤のシクロスポリンとプロトンポンプ阻害薬がしばしば併用される。

 カルシニューリン阻害薬は薬物代謝酵素CYP3A4によって代謝されるが、PPIもCYP2C19、CYP3A4によって代謝される。そこで小谷氏らは膠原病患者におけるPPIの使用がシクロスポリンの血中濃度に与える影響について検討した。

 対象は2008年1月から2011年3月までに大阪医大病院膠原病内科に入院し、シクロスポリンを使用した膠原病患者のうち、PPI以外にCYP代謝に影響する薬剤を併用していない連続25人とした。

 このうちPPI併用者は14人でランソプラゾール(LPZ)併用が8人、ラベプラゾール(RPZ)併用が6人。PPI非併用者が11人だった。ラベプラゾールは主に非酵素系で代謝されるため、CYP代謝経路への寄与が小さいとされる。3群間の患者背景(年齢、性別、体重、シクロスポリン投与量)には有意差を認めなかった。

 まずシクロスポリンの平均トラフ濃度(次回投与直前の最低血中濃度)を測定したところ、PPI非併用群では137.73ng/mL、RPZ併用群では128.38ng/mLだったのに対し、LPZ併用群では214.51ng/mLと他の2群に対して有意に高かった(それぞれp=0.0182、p=0.0185)。

 シクロスポリン投与2時間後の血中濃度については、PPI併用群で1515.63ng/mL、RPZ併用群では1433.58ng/mL、LPZ併用群では1804.31ng/mLで、LPZ併用群はRPZ併用群に対して有意に高く(p=0.024)、併用群に対しては有意差(p=0.1659)はないものの高値だった。RPZ併用群とPPI非併用群は、これら2つの血中濃度について有意な差は認められなかった。

 腎機能障害はPPI併用群の2人、LPZ併用群の5人、RPZ併用群の2人に発現し、極めて少数例ながら、PPI非併用群に対し、LPZ併用群では有意に多かった(p=0.048)。

 これらの結果から小谷氏らは、「シクロスポリン血中濃度はLPZ併用によって上昇することが示唆された。シクロスポリンとPPIの併用が多い膠原病患者においては、シクロスポリンの血中濃度にPPI服用が影響を与えることを考慮して、血中濃度モニタリングと副作用発現に注意すべき」とした。

 また、CYP代謝経路は個人差や人種差が存在することが知られており、今後、倫理委員会の承認を得て、遺伝子多型との関係を検討する計画だ」(同氏)とした。

(日経メディカル別冊編集)