慶應義塾大学医学部内科の井上有美子氏

 近年、関節リウマチRA)と心血管疾患の関連が注目されている。RAの病態である全身性炎症によって生じる血管内皮障害が動脈硬化の進行を早めるというもので、TNF阻害薬の投与により動脈硬化の指標が改善したという報告は多数ある。今回、慶應義塾大学医学部内科の井上有美子氏らは、RAの無治療期間が動脈硬化に与える影響などを検討。60歳未満の患者では、RAの無治療期間が動脈硬化の進行と関連することを見いだした。成果は、7月20日まで神戸で開催されていた日本リウマチ学会(JCR2011)で報告した。

 検討対象は、未治療新規RAの長期前向きコホート研究であるSAKURA studyに登録されており、糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併していない女性患者49人。動脈硬化の指標としては脈波伝播速度(baPWV)と頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)を測定した。

 まず対象患者を60歳未満(36人)と60歳以上(13人)とに層別化し、それぞれで症状発現から治療開始までの期間(無治療期間)が6カ月以上だった群と6カ月未満だった群に分け、baPWVとIMTを比較した。60歳未満、60歳以上のどちらも、無治療期間が6カ月未満だった群と6カ月以上だった群との間で、動脈硬化に影響を及ぼす可能性のある年齢、血圧、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)などの患者背景因子に、有意差はなかった。

 60歳未満での検討では、無治療期間6カ月未満群よりも6カ月以上群の方が、baPWVが高値の傾向にあった(p=0.08)。そこで50歳代の患者(23人)のみを抽出して実際の治療期間とbaPWVの関係を見たところ、有意な正の相関を認めた(p=0.007)。一方、IMTでは、無治療期間との間に有意な関連を認めなかった。また60歳以上では、baPWV、IMTともに、無治療期間との関連は見られなかった。

 次に、RAの疾患活動性が制御されれば動脈硬化が改善するかを検討するため、1年間の経過を追えた患者をDAS28CRPによりgood response群(19人)とmoderate/no response群(13人)に分類し、baPWVと関連を見た。だが、moderate/no response群だけでなくgood response群でも、baPWVの有意改善は観察されなかった。

 ただし、good response群について治療薬剤とbaPWVとの関係をみたところ、TNF阻害薬を使用している患者(7人)では全例で、baPWVが改善していた。これに対してメトトレキサートやサラゾスルファピリジン、ブシラミンなどDMARDsのみ(ステロイド併用例を含む)の患者(12人)では、baPWVの変化に一定の傾向は見られなかった。

 これらの結果から井上氏は、「60歳未満の患者では、RAの無治療期間が動脈硬化に与える影響が大きいことが示唆された。また疾患活動性がコントロールされていても、DMARDsでは動脈硬化は改善されない可能性が考えられる」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)