名古屋大学整形外科の小嶋俊久氏

 関節リウマチRA)治療においてQOL維持という高い目標を到達するためには、疾患活動性の制御や関節破壊の抑制だけでなく、身体機能や精神的機能をも考慮した治療が求められる。4月23〜26日に東京で開催された第53回日本リウマチ学会総会・学術集会のシンポジウムでは、名古屋大学整形外科の小嶋俊久氏が、日常生活動作への影響が大きい大関節に対する抗TNFα薬の効果や、RA患者の身体的機能と精神的機能の関連について講演した。

 小嶋氏はまず、抗TNFα薬を開始して6カ月以上経過観察できたRA患者156例を対象に、膝関節破壊の進行について検討した結果を報告した。膝に疼痛・腫張などの症状を有する患者(有症状群)は85例(142膝)、人工膝関節置換術TKA)を行った患者は26例(40膝)と、全体の約3分の2を占めた。

 有症状群では無症状群に比べて、治療開始年齢や罹病期間は変わらなかったが、Larsenグレード、治療開始時のDAS28スコアは有意に高かった。また有症状群では、関節破壊がより進行したLarsenグレード3/4の膝では約3割がTKA施行となったが、グレード0〜2の膝でTKA施行となったのは約1割だった。また、TKA施行までの期間はグレード3/4の膝の方が短かった(17.9カ月vs34.8カ月)。

 次に、頸椎病変に対するインフリキシマブの効果について、投与開始時と1年後に単純X線撮影を行い、(1)環椎歯突起間距離(ADI:環軸椎亜脱臼の指標)、(2)脊髄余裕空間(SAC:同)、(3)Ranawt値(垂直亜脱臼の指標)を測定した成績を紹介した。

 これら3項目のうち1項目以上が進行、すなわち頸椎環軸関節の不安定性が進行した症例は33例中14例(42%)であった。非進行群では投与開始時に比べて1年後のMMP-3が有意に低下したのに対し、進行例では1年後もほぼ同レベルの値を示し、強い軟骨炎症の存在が示唆された。

 また、インフリキシマブの臨床効果(DAS28-ESRによるEULAR改善)と頸椎環軸関節の不安定性の関係をみたところ、good response例では、不安定性が進行した症例は15例中3例だったが、moderate response例では18例中11例であった。

 RA患者のQOLを高いレベルで維持するためには、こうした関節病変の評価のみならず、身体的機能や精神的機能についても検討する必要がある。

 こうした観点から小嶋氏らは、生物学的製剤を投与されたRA患者44例を対象に、身体的機能と精神的機能の評価を行った。上肢の機能障害は就労に強い影響を及ぼすと考えられるため、身体機能スコアとしてmHAQだけでなく、上半身の身体機能を評価するDASH(Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand)を採用。就労群と非就労群の障害スコアを比較したところ、mHAQスコアには差は認められなかったが、DASHスコアは非就労群で有意に悪化していた。また、抑うつがあると身体機能スコアは悪化することが示された。

 以上の検討から小嶋氏は、QOLを高く維持するためには、関節病変の精密な評価を行うとともに、身体的・精神的機能の評価を行い、患者一人ひとりに合わせた治療のタイミングを考える必要があると述べて、講演を締め括った。