甲南病院加古川病院リウマチ膠原病センター整形外科の中川夏子氏

 生物学的製剤による治療は、関節リウマチRA)の疾患活動性関節破壊を抑制することが知られている。では人工関節置換術の施行数を減少させるだろうか。甲南病院加古川病院リウマチ膠原病センター整形外科の中川夏子氏は、4月23日から開催されている第53回日本リウマチ学会総会・学術集会で、生物学的製剤が手術に与える影響を多施設で検討した結果を報告した。

 中川氏は、インフリキシマブエタネルセプトなどの生物学的製剤の投与により、症例によっては関節破壊の抑制や修復が認められることは、自施設でも経験していると語った上で、本研究の目的を、(1)生物学的製剤が関節破壊を抑制できるのだから、各種の人工関節置換術は減少するはずであるという仮説と、(2)生物学的製剤によるRA治療の変化は、手術の種類や成績にどのような影響を及ぼすのかという疑問の2点を検証することだと述べた。

 対象は、国内のRA専門4施設(大学病院1、一般病院3)において2004年1月以降に生物学的製剤を投与されたRA患者1122例。そのうちの484例にはインフリキシマブとメトトレキサートMTX)が、415例にはエタネルセプトとMTXが、223例にはエタネルセプトが単独で投与されていた。

 調査内容は投与期間、継続状況(継続・中止・転院)、その他のRA病変に対する整形外科手術とし、各群間における年間手術発生件数を比較検討した。

 これら複数施設で集計を行ったところ、人工関節置換術の100人・年当たりの施行件数は、インフリキシマブ+MTX群で2.86件、エタネルセプト+MTX群で6.39件、エタネルセプト単独群で10.4件と、生物学的製剤の種類やMTX併用の有無により大きく影響を受ける可能性を示唆する結果となった。また、RA関連手術の100人・年当たりの施行件数についても、それぞれ5.49件、11.2件、14.5件と同様の傾向であった。

 また、上述の4施設に別の3施設を加えた7施設において、人工関節置換術以外の上肢・下肢手術件数の2004年から2008年の推移を集計してみた結果、下肢手術は減少傾向にあるのに対し、上肢手術は増加傾向にあった。

 周術期合併症に関して、生物学的製剤使用下で人工関節置換術を施行した154例を対象に検討したところ、創治癒の遷延が2例にみられたが、表層感染、深部感染ともに認められず、術後経過に問題はなかったという。

 こうした結果を踏まえて中川氏は、生物学的製剤の導入によって人工関節置換術の施行件数は減少する傾向にあると思われるが、今回の検討からは明確な結論にまで至らず、今後も注意深くかつ長期にわたり施行件数の推移を観察し続ける必要があると述べ、講演を締め括った。