東京女子医科大学東医療センター整形外科・リウマチ科の神戸克明氏

 生物学的製剤は手関節や足関節など、非荷重かつ小関節の関節破壊を抑制することが広く知られている一方、大関節への影響については小関節ほど豊富なエビデンスが得られていない。4月23日から26日まで、東京で開催された第53回日本リウマチ学会総会・学術集会のパネルディスカッションでは、東京女子医科大学東医療センター整形外科・リウマチ科の神戸克明氏が、大腿骨の骨組織に対するインフリキシマブの影響を組織学的に検討した結果を報告した。

 神戸氏らの施設で、これまでにインフリキシマブを投与した関節リウマチ(RA)患者は322例。そのうち約4割の症例が寛解に至っている。寛解に至った症例のうち約4割では、その後インフリキシマブを休薬でき、さらにその約2割はすべてのDMARDsを休薬する“ドラッグフリー寛解”に至ったという。今回、神戸氏らは、同施設における豊富なインフリキシマブ使用経験の中から、インフリキシマブ投与中に人工膝関節置換術TKA)を受けた患者の大腿骨骨組織を採取し、インフリキシマブ治療が骨組織に与える影響を免疫組織学的側面から検討した。

 検討の対象となったのはインフリキシマブ投与中にTKAが施行された患者10例・10関節から採取した組織で、インフリキシマブ非投与のTKA施行患者10例・10関節を比較対照とした。

 インフリキシマブ投与群の患者背景は、年齢65.3歳、罹患期間11年、メトトレキサート(MTX)投与量4.8mg/週、プレドニゾロン投与量3.8mgで、機能障害度はクラス3が7例、クラス4が3例だった。一方、インフリキシマブ非投与群の患者背景は、年齢67.6歳、罹患期間12.2年、MTX投与量5.2mg/週、プレドニゾロン投与量4.0mg、機能障害度はクラス3が7例、クラス4が3例であった。

 これらの患者の骨組織にヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、アリザリンレッド染色のほか、TNFα、IL-6、receptor activator of NF-κB ligand(RANKL)、オステオプロテジェリン(OPG)、オステオポンチン(OPN)、CD4、CD8、CD68に対する免疫染色を行い、両群の差異を比較検討した。

 検討の結果、HE染色所見は、インフリキシマブ投与群では骨髄の脂肪組織を分ける隔壁が厚く、細胞成分に富んでいたのに対し、インフリキシマブ非投与群では隔壁が薄く、細胞成分は少ないことが示された。免疫組織学的所見は、インフリキシマブ投与群ではTNFα、IL-6、RANKL、OPG、OPN、CD4、CD8、CD68がいずれも陽性であり、アリザリンレッド染色では骨梁へのカルシウム沈着が認められた。

 以上の検討から神戸氏は、インフリキシマブ投与下の大腿骨骨髄では、主に骨髄細胞成分で構成される骨髄内隔壁の肥厚がみられ、TNF-α、IL-6、RANKL、OPG、OPNが陽性であること、マクロファージあるいはTリンパ球などの細胞性免疫の活性化が認められると述べた。さらに、骨梁へのカルシウム沈着が認められたことは、インフリキシマブ投与による骨萎縮の改善を裏付けるものではないかと推論した。

 今回の検討により、インフリキシマブは、小関節で認められていたのと同様、大関節の骨組織に対しても、関節破壊の進行に抑制的な影響を与える可能性が示唆されたといえよう。